手紙で国際交流!

この春、
スウェーデンの
いくつかの図書館をまわって、
子どもたちと
ワークショップを行いました。

日本の紙芝居を読んだり、
おりがみで手裏剣を折ったりして
楽しみました。


スウェーデンの子どもたちは、
日本の漢字に興味しんしん。

おすしなど日本の食べものも
大人気でした。

名前を日本語で書くと……

参加してくれた子たちの名前を
日本語で書いてあげると、
みんな、よろこんでいました。


つづいて、
『こびん』
(松田奈那子 作・風濤社)
という絵本の
読み聞かせをしました。

『こびん』表紙

さまざまな人たちからの
手紙をあずかったこびんが、
海をただよい、
だれかに手紙を届けていく、
という物語です。

こびんの中からは、
手紙とともに、
たのしげな笑い声や、
おいしそうなにおいまでも
あふれ出してきます。

こびんをあけて
元気をもらった人たちが、
今度は手紙に返事を書いて、
こびんに託します。

こびんは、その手紙を
またべつのだれかへと
届けます。

とても心のあたたかくなる
すてきな絵本です。


この絵本を
子どもたちといっしょに
楽しんだ後、
スウェーデンの子たちに、
日本の子どもたちに宛てて
手紙を書いてもらいました。

その手紙を
ペットボトルにつめて……

お手紙をつめました。

わたしが日本に持ち帰ってきました。


スウェーデンの子どもたちに
書いてもらった手紙を、
今度は日本の子どもたちに読んでもらい、
返事を書いてもらうワークショップを、
この夏、行う予定です。

返事は、
同じくペットボトルにつめて、
スウェーデンに送ります。


手紙を通して
スウェーデンの子たちと
日本の子たちが
なかよくなってくれたら
すてきですね。




(絵本の表紙の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)
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ジャンル : 学問・文化・芸術

潜入!言語カフェ

お待たせしました!
スウェーデンおはなし旅、復活です。
またよろしくお願いします。


4月から5月にかけて
スウェーデン各地の
図書館を訪問してきました。

今回は、その報告を交えつつ、
作品をご紹介したいと思います。


言語カフェの案内チラシいろいろ

図書館で行われている、
さまざまな言語カフェの案内チラシ。
språkcafé(言語カフェ)や
stickcafé(編み物カフェ)などがあります。
図書館が人々の集いの場所の
ひとつとなっています。

こうしたカフェでは、
きまってお茶とクッキーが出され、
テーブルを囲んで
意見交換が行われます。

språkcafé(言語カフェ)には、
いろいろな種類があります。
スペイン語、ロシア語、アラビア語、
日本語カフェもありました。
みんなでわきあいあいと
おしゃべりしながら、
その国の言葉に慣れ親しみ、
話す機会を多く持ってもらう
というのがねらいです。


わたしは今回、
いくつかの図書館の
スウェーデン語の言語カフェに
潜入しました。

スウェーデン語のカフェは、
移民や難民の人たちに、
早くスウェーデン語を習得し、
社会に溶け込んでもらおうと、
会話の訓練の場を提供するものです。

図書館によってやり方はさまざまですが、
たいていは、ボランティアの人が
一つのテーブルに1人の割合で座り、
進行役をしてくれます。

あるカフェでは、
まだほとんど話せない初心者のグループと、
ある程度理解ができる中級のグループと、
2つにレベル分けをしていました。

レベル分けせず、
自由に好きな席に座り、
同じテーブルになった人たちと
話をするというカフェもありました。

しかし、そうすると、
まだあまり話せない人は
なかなか話の輪に入れず、
手持ち無沙汰にしている様子が
見られました。
レベル別に分かれている方が、
みんな積極的に発言している印象でした。

進行役の力量も重要です。
うまい人は、みんなが発言できるよう、
全員に話をふり向けていました。

はじめに、同じテーブルに座っている全員が、
一人ずつ簡単に自己紹介をし、
そのあと、話す話題を決めますが、
多くの図書館では、
カードを使って決めていました。

いろいろな質問が書かれたカードが、
一人ひとりに配られます。

たとえば、
「100万円あったらどうするか」
「子どものころの夢は何だったか」
「人生でもっとも影響を受けた人はだれか」
などと書かれており、
自分のカードに書かれた質問について、
順番に答えていきます。

話したい話題を参加者から募る場合も
ありました。
また、政治と宗教の話題は厳禁
というカフェもありました。


いくつか参加した中から、
特におもしろかったものを
ご紹介します。

イェーテボリの図書館のカフェでは、
わたしも含めて7人の参加者と、
ボランティアの方1人で行いました。

参加者の中には、
シリアから来た男性で、
5歳の息子を
シリアに残してきている
という方がいました。

息子さんと毎晩スカイプで、
サッカーの話をするのが
何よりの楽しみだそうです。

シリアでは医者をしていましたが、
スウェーデンでも医者として働きたいと、
現在試験勉強中とのことでした。

ソマリア出身の青年も二人いました。
現在は、高校に通って
スウェーデン語の習得に
はげんでいるそうです。

2015年9月30日の記事でご紹介した、
"Baddräkten"(「水着」)は、
家族とともにスウェーデンに
移り住んできた
ソマリア人の女の子が
文化のちがいに直面するという
おはなしでした。

主人公の女の子は、
学校のプールの授業に
参加したいのですが、
両親に許してもらえません。

「ソマリア人の女の子は
男の子と一緒に泳がない。
泳いではいけない。
そういうきまりだから」
おはなしの中には、
そんな一節が出てきます。

実際はどうなのか、
ソマリア人の青年たちに
きいてみたところ、
この一節とそっくり同じ答えが
返ってきたのには
おどろきました。

また、青年の一人には、
女のきょうだいがいるそうですが、
ソマリアでは、女性が家事をし、
男性は外で働くというのが当たり前で、
とくに疑問には思わないそうです。

これに対し、
スウェーデン人の進行役の方が、
「でも、今はスウェーデンに
住んでいるのだから、
あなただって、
自分で家事をしないわけに
いかないんじゃない?」
と質問したところ、
今は自分でしているとのことでした。

男性の自分にも家事はできるけれど、
ソマリアではやらない。
そういうきまりだからだそうです。

シリア出身の男性からは、
「医学的に見て、女性と男性とでは、
もともと得意なことがちがうのではないか」
という意見が出ました。

女性は一度にいろんなことをするのが得意で、
たとえば、電話で話しながら
料理を作ったりできるけれど、
男性の自分にはとてもできない。
そのかわり、
男性は一つのことに秀でている場合が
多いのではないか。

すると、
これまたスウェーデン人の
司会役の女性が猛反発。


また、別の図書館のカフェでは、
イラン出身の女性と、
ソマリアの隣国出身の女性と
いっしょのテーブルになったので、
同じくたずねてみると、
男性と一緒に泳いではいけないというのは、
やはり、そういうものだからで、
疑問には思わないそうです。
それが現地では当たり前で、
男性と一緒に泳ぐなんてありえない、
と笑っていました。

現地では当たり前のきまりで
規制があることも、
スウェーデンにきたら
規制がないのでできるのでは、
ときいてみたところ、
たとえば、ショールをつけないでいるとか、
水着を着て泳ぐとか、
自転車に乗るとか、
スウェーデンではやろうと思えば
できるかもしれないけれど、
肌を見せるのははずかしいから、
とてもできない、といっていました。


今回、言語カフェに参加して、
文化や慣習のちがいにより、
考え方もさまざまだというのが
とてもおもしろく、新鮮でした。

言語の習得はもちろんですが、
あたらしい出会いや
思いがけない発見が
たくさんあるというのも、
言語カフェの大きな魅力の
ひとつではないでしょうか。


最後に、
その魅力を存分に描いた、
こんな物語をご紹介します。

"Mitt rätta namn"
(「わたしのほんとうの名前」
Åsa Storck 作 Vilja社)

Mitt rätta namn 表紙

図書館の言語カフェで出会った、
シリというおばあさんとヤッレという少年。
二人の視点が交互に描かれていきます。


シリは、言語カフェの常連です。
第二次世界大戦中、
まだ子どもだったシリは、
一人ぼっちで
フィンランドからスウェーデンへと
戦火を逃れてきました。
それ以来、今までずっと
スウェーデンで暮らしています。

一方のヤッレは、
家族とはなれて、たった一人、
イラクからスウェーデンに
逃れてきたばかりの少年です。
支援員の人に連れられて、
この言語カフェにやってきました。
案内されたテーブルにすわっていたのが
シリでした。

とまどっているヤッレにおかまいなく、
支援員の人は、
シリにヤッレを紹介します。

でも、ヤッレという名前は、
実は本名ではなく、
支援員の人がよびやすいようにつけた
あだ名でした。

「ぼくのほんとうの名前は、
ヤーマルです」
まだスウェーデン語のできない少年は、
身ぶり手ぶりで
必死に伝えようとします。

その熱意に心を動かされたシリも、
これまで隠していた自分のほんとうの名前を
少年にうち明けます。

シルパというのが、
シリのほんとうの名前でした。
フィンランド人の名前ではまずいからと、
スウェーデン風の名前に
変えていたのです。


シルパとヤーマル。
共に何も持たずに逃れてきた
ふたりにとっては、
名前だけが、ただ一つ、
ずっと持ち合わせてきた
ものだったのです。

ふたりはしだいにうち解け、
心を通わせていく。
そんな物語です。


言語カフェは、
なくしかけていた
誇りや自信を取りもどす
きっかけとなる場とも
なりうるかもしれません。


次回の更新は、7月の予定です。



(本の表紙の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

講演会ふりかえり

前回の記事にてお知らせしました、
絵本作家Emma Virkeさんの
講演会およびワークショップは、
無事に終了しました。

お越しくださいました皆さま、
ありがとうございました。


講演会では、
社会の動きを反映した
スウェーデンの絵本についても
話していただきました。

今回のブログでは、
Emmaさんの講演について、
わたしが後日お聞きしたことも含めて、
ご紹介したいと思います。


難民や移民の人たちが
大勢やってきていることを受け、
スウェーデンの絵本にも、
難民や移民の人たちを描いた作品が
多く登場するようになってきました。

講演では、
そうした作品のいくつかを
実際にご紹介していただきました。

Åka buss表紙

講演で取り上げられた
絵本のひとつ
"Åka buss"
(「バスにのって」 
Henrik Wallnäs 作・Matilda Ruta 絵
Natur & Kultur社)

この作品では、
戦火を逃れて
新しい国にやってくるのは、
ネコの家族です。

戦火を逃れて逃げる主人公たち

難民について扱った絵本には、
動物など人間以外のものを
主人公にすることで、
深刻なテーマを重くなりすぎずに
伝えようとする工夫が
多く見られるようです。


こうした絵本は
主にスウェーデン人の子ども向けに
描かれたもので、
戦争や避難を経験したことのない
子どもたちに、
現状をわかりやすく伝え、
難民の人たちへの理解を
深めてもらうのがねらいだそうです。


難民の子たちは、
まだ言葉がわからないので、
絵本が読めなかったり、
そもそも、絵本を読む習慣そのものが
ないという場合もあります。

そのため、
絵本とはどんなものか、
絵本の楽しさを伝えるところから
はじめる必要があるそうです。


たとえば、
難民宿舎に暮らす子どもたちに、
文字のない絵本を紹介して、
絵本に触れてもらう活動なども
広がってきています。

文字のない絵本であれば、
言葉がわからなくても楽しめ、
また、何が書いてあるのか、
たがいに意見交換することで、
新しい言語の習得にも役立ちます。


移民や難民をテーマにした作品には、
もう少し大きい子向けの
読み物もたくさん出ています。
そうした作品は、
スウェーデンにしばらく住んで、
言葉がわかるようになってきた
子どもたちにも親しまれています。

このブログでも、
以前にいくつかご紹介しましたが、
たとえば
2015年9月の記事で取り上げた
"Baddräkten"(「水着」)
という作品では、
文化の摩擦に苦しみながらも
スウェーデン社会で
一歩を踏み出そうとする
親子の姿を描き、
作品を読んだ難民や移民の子たちから、
「わたしのことだ!」と
共感する声が多く寄せられたそうです。


まだあまり言葉がわからない
移民や難民の子たちでも
手に取ってもらいやすいよう、
スウェーデン語とほかの言語とを
併記して書かれた絵本も
少しずつ登場しています。

"Flykten"
(「避難」
Mia Hellquist Forss 作・絵
Razak Aboud アラビア語訳)

Flykten表紙

この絵本では、
難民となった一家が、
故郷にも友だちにも
すべてに別れをつげて、
安全な国へと逃れていくようすが、
スウェーデン語とアラビア語の
両方でつづられています。

泣く泣く運動場をあとにする男の子
2か国語で併記


しかし、こうした
つらい現状を伝える作品を
当事者の子どもたちが実際に読んだとき、
自分の体験を思い出して
悲しくなってしまうということも
あるのではないでしょうか。


Emmaさんにお聞きしてみたところ、
つらい経験をしたのは
自分だけではないと思うことで
安心できる部分もあるのではないか、
だから、そうした話題を敬遠ぜず、
取り上げることも必要なのではないか、
とのことでした。


そのような考えから、
スウェーデンでは、
絵本であっても
別れや死などの重いテーマを
あえて取り上げることも多いようです。


自分の体験してきたことや
その受け止め方は
ひとりひとり違うでしょうし、
作品の感じ方も異なるので、
何がいい悪いとは、
一概にはいえないと思いますが、
深刻な話題だからと避けずに
取り上げることで、
本選びの幅は広げられるのではないか、
と感じました。



次回の更新は、5月の予定です。
(4月はお休みします)



(絵本の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

お知らせ

2014年11月の記事にて
紹介しました絵本
"Memmo och Mysen söker efter färger"
(「メモとミーセンの色さがし」)
の作者
Emma Virke(エマ・ヴィルケ)さんが
来日されるのにともない、
エマさんの講演会および
ワークショップを
開催いたします。


講演会
3月13日(月)18時~20時
スウェーデン大使館にて

絵本作家としての
エマさんの活動と、
社会の動きを
うつしだす
スウェーデンの絵本について
お話していただきます。

講演会のお申し込みは、
スウェーデン社会研究所ホームページ
よりお願いいたします。

講演会チラシ


ワークショップ
3月18日(土)13時~15時
よみうりカルチャー荻窪センターにて

エマさんといっしょに
コラージュを使った作品づくりに
挑戦します。

ワークショップのお申し込みは、
よみうりカルチャー荻窪ホームページ
よりお願いいたします。

ワークショップチラシ


ご興味のある方は、
ぜひお越しください。

テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

スウェーデンのしあわせ絵本館 食の巻その3

食べられるということ自体が、
しあわせに感じられる
場合もあります。

“Hoppas”
(「希望」
Åsa Anderberg Strollo 作・
Gilla böcker (Lilla piratförlaget) 社)


Hoppas 表紙

家庭に居場所がなく、
家をとびだした少女ヨンナが、
都会で路上生活をはじめる物語。

町をさまよい、
仕事も住む場所もなく、
バスの車内やゴミすて場で
夜を明かすうち、
ヨンナは、同じように行き場を失った
少女たちと出会い、
友情を深めていきます。

大都会のはなやかさとは対照的に、
生きていくために、
万引きや売春をする少女など、
苦しい境遇の中で必死に生きる
子どもたちの姿が描き出されます。


ヨンナが仲良くなった
少女たちのうちの一人エリーナは、
ゴミのコンポストの中で暮らし、
コンビニで売れ残った
シナモンロールをひろって食べて、
命をつないでいました。

スウェーデンのおやつの定番で、
コンビニでもかならず売られている
シナモンロールですが、
つねに焼き立てを提供しているため、
冷めたら捨てられてしまうのです。

エリーナは、
そんなシナモンロールを食べ、
公園のトイレの水を飲んで
暮らしています。

エリーナとヨンナは、
ゴミのコンポストの中で、
捨てられたシナモンロールを食べながら、
お互いの境遇を語り合います。


町には、ヨンナたちのように
行き場のない子どもたちのための
サポートを行っている施設があり、
ヨンナたちは、ときどきそこへ行って、
支援員の人たちと
食事をしたり、雑談をしたりして、
つかの間、心の休息を得ます。


以前、日本のこんなドキュメンタリー番組を
見たことがあります。
行き場を失った子どもたちに
食事を提供したり、相談に乗ったりして、
彼らのよりどころとなっている
女性について紹介したものでした。

子どもたちには、安心して、
しっかりごはんを食べられる
環境が大切だ、
という女性の言葉が印象的でした。


食卓を囲んではぐくまれる、
支援員の人たちとの交流や、
同じような悩みをかかえた
仲間との友情。

この物語のタイトルのHoppasは、
「希望を持つ」という意味です。
絶望のふちにあっても、
かならず希望はある、
というメッセージが
こめられているようです。

どんなにかすかな希望でも、
光を見出したとき、
人はしあわせに感じるのでは
ないでしょうか。
そうしてつかんだしあわせは、
きっと大きな力になるように思います。


食にまつわるしあわせ、
いかがでしたでしょうか。

次回は、別の観点から
「しあわせ」を
探してみたいと思います。



(本の表紙の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

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プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介にたずさわる。
スウェーデン児童文学翻訳家。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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