はげましでは金メダル

リオデジャネイロオリンピックが
閉幕しました。

選手たちのがんばりに勇気づけられ、
たくさんの感動をもらった
オリンピックでしたが、
なかでも印象に残ったのは、
陸上男子走り高跳びに出場した
シリアの選手です。

予選では、
連続して落下してしまいましたが、
ラストの一本で底力を見せました。

自分の母国シリアで、
戦闘に巻き込まれ、
苦しんでいる人々を
少しでもはげましたいと、
がんばったそうです。

みごと決勝に進み、
7位入賞をはたしました。

この選手は、
シリア代表として出場しましたが、
今回のオリンピックでは、
難民選手団も結成されて
話題をよびました。

難民にはなっていないものの、
日々、命の危険にさらされながら
練習を続けてきた選手もいます。

ライバルとして共に戦ってきた友人を
テロで亡くしたという、
イラクのある選手は、
彼のためにもがんばる、
と語っていました。


彼らの活躍は、
同じ境遇にある人たちの
支えとなるだけでなく、
わたしたちにとっても、
大きなはげましになり、
いろいろと考える機会を
与えてくれます。


今回は、そのような逆境にあっても
負けない選手の活躍にちなんで、
こんなおなはしをご紹介します。

"Spring, Amina!"
(「はしれ、アミーナ!」
Annelie Drewsen 作
Nypon社)


アミーナは、家族とはなれて、
ソマリアからたった一人、
スウェーデンに逃れてきた
難民の少女です。

ソマリアにいたときは、
日々、爆弾におびえていたので、
大きな音がすると、
反射的に走り出すくせがついていました。
アミーナのお兄さんは、
走るのが遅れたために、
死んでしまったのです。


ある日、スウェーデン人の友人のリーナと
町を歩いていたアミーナは、
大きな音におどろいて、
思わずダッシュしてしまいました。

アミーナの走りを見たリーナは、
その速さに感心して、
アミーナを陸上クラブにさそいます。


こうして、アミーナは、
陸上クラブに通いはじめました。

やがて、選手にえらばれ、
大会に出場することに。
しかし、アミーナは、
スパイクを持っていませんでした。

アミーナは、一生懸命
お金をためていましたが、
お母さんから、
いとこが病気になったと
知らせを受け、
お金をすべて
お母さんに送ってしまいます。


スパイクも買えず、
アミーナは、大会に出場するのを
あきらめていました。

しかし、当日、
リーナがけがで出場できなくなり、
自分のスパイクをアミーナに貸してくれます。

アミーナは、
リーナのスパイクを借りて出場し、
みごと2位になりました。

そして、副賞には、
なんとスパイクをもらったのです。


部屋にもどったアミーナは、
お母さんとお兄さんの写真にむかって、
メダルとスパイクをかかげてみせ、
「次は金メダルを」と
誓うのでした。


どんなにつらい状況にあっても、
懸命にがんばる彼らの勇姿から
学ぶものはたくさんあります。
恵まれた環境でいられることに感謝しながら、
彼らを見習ってがんばろうと
思ったオリンピックでした。

こうした選手たちの
がんばりが報道されることで、
難民について知る機会が
増えるのはもちろん、
スポーツを通して、
彼らをより身近な存在として
感じられるようになると
よいと思います。



次回の更新は、9月末の予定です。





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いよいよ夏本番!

関東でも梅雨明けし、
いよいよ、
本格的な夏の到来です。

スウェーデンでも、
夏は人々の心はずむ季節。

そんなスウェーデンの夏の
しあわせなひとときを
ギュッとつめこんだ絵本を
ご紹介します。


"Sommar”(「夏」 
Sara Lundberg 作・絵
Alvina社)


表紙



おひさまの下で、ごはんにしよう!

おひさまの下でごはんにしょう!


あたたかく
気持ちのいい夏の日は、
庭先で食べるのにもってこいです。

スウェーデンの学校は、
6月の初めから8月の半ばまで、
長い夏休みがあります。
仕事の休暇も
5週間ほど取れるので、
家族で別荘に行ったり、
旅行に行ったり、
キャンプをしたりして
過ごすことが多いようです。


夏のバーベキュー

おひさまの光をあびながら、
ごはんを食べてのんびり過ごすのは、
スウェーデンの夏の楽しみの一つです。



サイクリングに行こう!

サイクリングに行こう!


下のサイクリングロードは、
大きな川に沿って
約90キロほど続いており、
道の途中にある町に宿泊しながら、
完走をめざす人もいます。

川沿いにつづくサイクリングロード


いたるところで
牛が草をはんでいる
のどかな風景の中を
自転車で走っていくのは、
とても気持ちのいいものです。

牛の群れ発見



森にベリーをつみにいこう!

ベリーを摘もう!


ブルーベリーやキイチゴは、
スウェーデンの人たちにとって、
とても身近な存在です。
まだ朝はやい森の中、
おばあさんがひとり
何をしているのかと思えば、
ベリーを摘んでいたり……
という光景にでくわすこともしばしば。

つみたてキイチゴ


ベリーを摘んだ後は、
ジャムにしたり、
ケーキのトッピングにしたりして、
おいしくいただきます。

自然の素材の手作りケーキ



湖で泳ごう!

湖で泳ごう!


スウェーデンの夏といえば、
忘れてはならないのが、湖。
魚釣りをしたり、泳いだり。
スウェーデンでは、
いたることころにある湖で
泳いでいる人たちの姿をよく見かけます。

湖のほとりで


キャンプ場で。
いかだで川をわたりつつ、釣りをする人。

釣り日和


さて、そんな夏のキャンプ場ですが、
シーズンオフの時期は、
難民の人たちの住居として
使われているところが
多くあるようです。

押し寄せる難民たちの
住居の確保に四苦八苦している
スウェーデンの移民局が注目したのが、
シーズンオフで人のいない
キャンプ場でした。

夏の観光シーズンをのぞいて
キャンプ場を借り受け、
難民の人たちに
住む場所を提供しています。

しかし、夏のシーズンになって、
観光客たちがやってくると、
難民の人たちは、
キャンプ場を
出ていかなくてはなりません。

ようやく住み慣れてきたのに、
また別のところに
移らなくてはならないのは、
かなりの負担です。

そこで、あるキャンプ場では、
観光客と難民の人たちとで
キャンプ場をシェアしてもらおう、
という試みがはじまりました。

難民の人たちも、
出ていかなくてすむと
ほっとしています。

「言葉や文化を学びあえる
いい機会になって楽しみ」と、
キャンプ場で暮らす
難民の人の一人は、
コメントしていました。


楽しい夏は、平和の上に
成り立っているのだということを
忘れないでおきたいものです。



次回の更新は、8月末の予定です。



(絵本の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)

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お知らせ

2016年2月のお知らせにて
ご紹介しました、
『ラミッツの旅 
ロマの難民少年のものがたり』

今年の夏休みの本(緑陰図書)に
選ばれました。

全国学校図書館協議会 
第49回夏休みの本(緑陰図書)
http://www.j-sla.or.jp/recommend/natsuyasumi-49.html

ご興味のある方は、
ぜひご覧ください。



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がんばる力の連鎖反応

最近、こんなすてきな
ニュースを見つけました。

ストックホルム郊外の町にある
デザインセンターLivstycketでは、
移民の女性たちが
スウェーデン語を学びながら、
刺繍やテキスタイルデザインなどを
行っています。

そんな彼女たちの作ったかばんが
EU議会で採用され、
職員のかばんとして
使われることになったそうです。


Livstycketは、
移民女性たちを支援する団体として、
1992年にはじまりました。

ここで学ぶ生徒たちの中には、
他の学校でスウェーデン語の授業に
ついていけなかったり、
まわりの環境になじめなかったりして、
自信を失い、
孤独感に苦しんできた人も
多いようです。

生徒たちは、
テキスタイルを通じて、
楽しみながらスウェーデン語や
スウェーデンの文化を学ぶことで
自信を取り戻し、
社会に溶け込むための
一歩を踏み出しています。


これからご紹介する絵本
"Den andra mamman"
(「生まれ変わったお母さん」
Viveka Sjögren 作・絵
Kabusa Böcker社)
に登場するお母さんも、
スウェーデン社会に
なじめないでいます。


幼稚園の遠足で、
海に行くことになった
わたしとニーナとお母さん。

でも、集合場所のはずのバス停に、
他のみんなの姿は見えません。

スウェーデン語が
分からないお母さんは、
どうやら、集合場所を
間違えてしまったようです。

お母さんは
スウェーデン語が話せないので、
だれかに道をたずねることもできません。

「こんなお母さんなんていや。
どうして、みんなみたいに
スウェーデン語を読んだり、
話したりできないの」
と、わたしは思います。


しかたなく、
三人は歩き出しました。

ところが、
途中で大きな牛に
出くわしてしまいました。

「助けて、お母さん!」

すると、お母さんは、
かぶっていたスカーフをはずして、
牛に立ち向かいました。
闘牛士のように
ひらりと牛をかわすと……

「ほーら、ちょろいもんよ」
わたしとニーナはびっくり。


とうとう、海につきました。
三人の前には、
どこまでもつづく広い海が
広がっています。

夕方になりました。

バスはいつくるのでしょう?
時刻表を見ても、
なんて書いてあるのか、
よく分かりません。


やがて夜になりました。
お母さんは、スカーフで
浜辺にテントをはりました。

「お母さん、
何かおはなしをして」

お母さんは、
バスの時刻表を取り出すと、
「むかしむかし、あるところに……」


朝になりました。
お母さんはスカーフを広げて
凧をつくりました。

なんだか、
いつものお母さんとは、
まるで別人みたいです。

浜辺の向こうから、
犬を連れたおばさんが
歩いてくるのが見えました。

「あの人に、
バスがいつくるか聞いてみるわ。
あなたたちは、ここで待っていて」
そういうと、お母さんは
大空に凧をかかげて、
元気に走っていきました。


このお母さんのように、
何かのきっかけで
自信を取り戻すことができれば、
それが励みとなって、
次へ進もうと思えるように
なれるかもしれません。

この絵本の中のお母さんや、
Livstycketの生徒さんたちの
がんばる姿が、
彼らと同じ境遇にある移民たちや、
自信をなくしかけている、
他の多くの人たちに
勇気を与え、
自分もがんばってみようと、
一歩を踏み出す力を
与えてくれるのではないでしょうか。



次回の更新は、7月末の予定です。

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デモクラシーのすゝめ

5月1日は
労働者の祭典メーデーでした。

スウェーデンでは、
この日は祝日で、
さまざまな団体が
各地でデモや演説をするのが
毎年の恒例になっています。

みずから声を上げ、
行動を起こすことで
社会は変えられる、という意識を
子どものうちから持ってもらおうと、
こんな絵本も登場しています。

"Charlie, Mika & nalleföreningen"
(「チャーリーとミーカとくまちゃん組合」
Linnéa Sjögren / Niklas Hill 作
Pernilla Lundmark 絵
Trinambai社)

表紙

お母さんに
「早くねなさい」といわれた
チャーリーとミーカの兄妹は、
ちっともねむたくありません。

「つかれてないのに
ねなくちゃいけないなんて、
不公平だよ」

兄妹は、
ぬいぐるみたちを集めて、
「くまちゃん組合」なるものを
結成しました。

デモをするくまちゃん組合

「ねるの反対」
「もっとあそぶぞ」などと
書かれたプラカードを持って、
家の中でデモ行進をする
くまちゃん組合。

抗議のポスターがずらり

「夜はおことわり」
「自分がねなさい!」
「パジャマ禁止!」などなど、
部屋じゅう、
抗議のポスターだらけです。

歯みがきストライキ

しまいには、
口にテープをはって、
歯みがきを拒否。


たまりかねたお母さんは、
とうとう、くまちゃん組合に
交渉を持ちかけることにしました。

話し合いの結果、
くまちゃん組合は、
寝る時間を
30分遅くしてもらうことに
成功したのです。

次回のデモのうち合わせ

すっかり味をしめた
チャーリーとミーカは、
今度は、夕ごはんを
毎日パンケーキにしてもらう運動を
計画しはじめるのでした。


このように、
声を上げることで
社会は変えられるということを、
小さいうちから
教えているスウェーデンですが、
今年のメーデーでは、
ネオナチによるデモも行われ、
人々の間に波紋が広がりました。

スウェーデンの中でも
多くの移民を受け入れている
ブーレンゲという地方で、
ネオナチ政党が
移民排斥と人種主義をうったえる
デモ行進を行ったのです。

暴動などは
起こらずにすみましたが、
移民たちの多くは、この日、
身の危険を感じて
外出するのをひかえたようです。


だれにでも
現状を変えようと
声を上げる権利があるのは
良いことですが、
みんなが自由に意見を出し合い、
話し合うことによって、
多くの人に住みよい社会をめざすのが、
ほんとうのデモクラシーと
いえるのではないでしょうか。



次回の更新は、6月末の予定です。





(絵本の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)








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プロフィール

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介にたずさわる。
スウェーデン児童文学翻訳家。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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