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スウェーデン&日本の子どもたちの合作絵本

日本の子どもたちと、
スウェーデンに暮らす難民の子どもたちとで、
いっしょに絵本を作る活動を通し、
日本の子たちに、難民について
もっと関心を持ってもらいたい……。

そんな思いからはじまったのが、
「本でつながるプロジェクト」です。

日本の子とスウェーデンの子が、
交互に1ページずつ、
リレーのようにして
物語のつづきと絵をかいてつなげ、
1冊の絵本にまとめます。


まずはキャラクター作りから。
物語に登場させたいキャラクターを、
一人ひとり考えました。

キャラクターいろいろ


絵本作りとあわせて、
文通やビデオレター、
FacebookやZOOMでのやりとりも行い、
交流を深めていきました。


そして、およそ3年のときを経て、
ついに絵本が完成!

はじめたころは
小学生だったメンバーも、
はや中学生に……。


これが完成した絵本です。

みんなでかいた表紙


表紙も、日本とスウェーデンの子たちが
協力して仕上げました!


物語を少しだけ紹介します。

スウェーデンに暮らす少年ジョンは、
病気のお父さんをたすけるため、
お医者さんをよびに出かけました。

いよいよ冒険のはじまり!


とちゅうで出会った仲間たちといっしょに、
とおくはなれたお医者さんの家をめざします。

仲間もいっぱい


ところが、
なぞの強敵「おばさんZ」があらわれて……

強敵おばさんZあらわる!!


あやうし、ジョンと仲間たち!
無事にお医者さんの家に
たどりつけるのでしょうか?


参加してくれた日本の子どもたちの中には、
おたがいを身近に感じるようになり、
難民についてのニュースを見ても
他人事ではなくなった、
と、感想を語ってくれた子もいました。


物語には、続編もあります。
続編では、
ジョンと仲間たちが、
なんと日本に
あそびにやってきます。


続編からは、
日本に暮らすクルド人のきょうだいも
参加してくれました。


どんな作品になったのか、
気になる方は、
新宿区立大久保図書館で
読むことができますので、
ぜひ手に取ってみてください。



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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

お知らせ

あたらしい翻訳読み物を刊行しました。

ラビットホッピング!

『ラビットホッピング! 
うさぎがぼくのパートナー!?』

マーリン・エリクソン作 
きただいえりこ訳 
森山標子絵 
理論社


本のタイトルにもなっている
「ラビットホッピング」とは、
うさぎと人がチームを組んで、
障害物をジャンプし、タイムを競う
スウェーデン発の競技です。


主人公のアルヴィンは、
ちょっと気弱でやさしい、
動物がすきな男の子。

病気の妹や、
妹の世話にかかりきりの両親を気づかい、
いろんなことをがまんして、すごしています。

そんなアルヴィンは、
ある日、ひょんなことから
「ラビットホッピング」と出会い、
すっかり夢中になります。

大会に出場したいという思いを
つのらせるアルヴィンでしたが……


自分の気持ちに正直になること、
そしてまた、
相手の気持ちを受け止めることの大切さにも
気づかせてくれる、
心あたたまる物語です。



(本の表紙の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

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五感で味わうあたらしい世界

先日、ピアニストの
梯剛之(かけはし たけし)さんの
チャリティーコンサートに行ってきました。

梯さんは、幼いころに視力を失い、
盲目のピアニストとして
世界的に活躍しています。

これまで生の演奏を聴いたことは
あまりなかったので、
とても新鮮でした。
演奏はすばらしかったです!

トークも楽しく、
気取らないきさくな人柄に
魅了されました。


梯さんは楽譜が見えないので、
曲を何度も何度もくりかえし
聴いておぼえるのだそうです。

小児がんで片方の視力を失い、
その後、もう片方の目にも転移が見つかり、
手術をしなければならないというときに、
ショパンの曲と出会って
心を動かされ、
自分もこんなふうに弾けるようになりたい、
と思ったことが、
ピアニストをこころざすきっかけになった、
と語ってくれました。

そうした強い思いが、
人の心を打つ音色の
原動力となっているのだなあ、
と感じました。


体でリズムや息づかいを感じながら弾く、
という梯さんの演奏を聴いて、
こんな絵本を思い出しました。


"Blinda rädluvan och vargen"
(「目の見えない赤ずきんちゃんと
オオカミのおはなし」
ハン・シー 作 
リリー・シエ スウェーデン語訳
※原作は中国語ですが、
わたしは中国語が読めないので、
スウェーデン語訳で読みました。)

だれもがよく知っている
グリム童話の「赤すきん」のおはなしを
もとにしていますが、
この絵本の赤ずきんちゃんは、
目が見えません。

そのかわり、
音やにおいや手触りで、
あたらしい発見をします。

あたらしいことに気づくたび、
赤ずきんちゃんのまわりの世界が
しだいにはなやかになっていきます。


梯さんのコンサートを聴いていたとき、
目を開けて聴くのと
目を閉じて聴くのとでは、
聞こえ方がちがうことに気がつきました。

わたしの座っていた席は
後ろの方だったので、
目を開けて聴いていると、
音も遠くからきこえてくるような
感じでしたが、
目を閉じて聴くと、
音が立体になって立ちのぼってくるようで、
まるで、すぐそばで
ひびいているように
感じられました。


それぞれの感覚を研ぎすまして
世界を味わうというのは
こういうことなのかな、と
赤ずきんちゃんの思いが
少しだけわかったような気がします。


赤ずきんちゃんは
オリジナルのおはなしと同じく、
やっぱりオオカミに出会います。

オオカミは、
赤ずきんちゃんの目が
見えないのをいいことに、
「自分はかわいいイヌだよ」とウソをつき、
赤ずきんちゃんを食べる機会を
ねらっているのですが・・・

オオカミのまぬけさに
思わずクスリとさせられ、
赤ずきんちゃんのやさしさに
ほっこり心があたたまる絵本です。



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ジャンル : 学問・文化・芸術

ザ・絵本で漫才!

9月になり、
学校も2学期がはじまりました。

わたしが学校司書をしている小学校では、
秋に読書イベントがあります。

今年は、あらたな取り組みに
チャレンジすることになりました。
その名も「ビブリオ漫才」!

以前、大阪市立図書館の
「書評漫才グランプリ」という、
ユニークな取り組みについて知り、
とてもおもしろそうだなあ~
と思ったのがきっかけです。

大阪市立図書館「書評漫才グランプリ」
リンクはこちら↓
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/?page_id=1355


「書評漫才グランプリ」では、
2人もしくは3人でチームを組み、
1冊の本を、3分間の漫才で
紹介します。

大阪市立図書館で行われた
書評漫才グランプリの優秀作品の動画を
子どもたちといっしょに見たところ、
みんな大ウケし、
やってみたい!というツワモノが続出。

こうして、わが小学校でも
開催することになったのです!

わたしも子どもちたちに負けじと、
大阪市立図書館のHPで
漫才のコツを学び、
ネタ作りに挑戦してみました。

これがそのネタです。


A:今日は絵本を1冊紹介したいと思います。
B:さっそくか。で、本のタイトルは?
A:
『うっかりおじさん』
(エマ・ヴィルケ 作・絵 
きただい えりこ 訳 朔北社)
です。

『うっかりおじさん』

B:絵本におっさん? 
みょうな組み合わせだな。
A:そんなことないですよ。
○○先生や△△先生だって、
よく絵本の読み聞かせを
してくれるじゃないですか。
B:おいおい、しつれいだぞ……。
先生方、まだまだお若いですよ! 
で、どんな話なんだ?
A:おじさんが出てくるんですが……。
B:そりゃ、見ればわかるだろ!
A:めがねをなくしちゃったので、
さがしてほしいそうです。
B:めがねか……。

めがね

おっ、あったぞ。これか? 
ためしにかけてみるか。それっ!

ぼや~

あれっ、絵がぼけて見えるぞ!
A:ボケるなら、絵じゃなくて、
漫才でしてもらえると
ありがたいんですが……。
B:ボケはおまえだろ!
A:そうでしたっけ?
B:もういい。で、おっさんは、
今度は何をさがしてほしいんだ?
A.はえです。
B.は? はえ?
A.はい、これです。

チョウネクタイ

B.って、チョウネクタイじゃないか!
A.ね、インスタばえでしょ?
B.そりゃ、はえの意味がちがうだろ……。
A.スウェーデン語では、
「はえ」と「チョウネクタイ」は、
同じ言葉なんですよ。
B.へえ~、そうなのか。
でも、どうやって日本語にしたんだ?
A:それは読んでのお楽しみです。
B:うわー、めっちゃ気になるー。
A:では、おじさんがつぎに何をわすれるか
あてたら教えてあげます。
B:よし! 
はえある栄冠を勝ちとってやるぜ。
こたえは……パンツ!!
A:あー、おしい!
B:おしいんかい!? 
いったいどういう絵本なんだよ。
あやしい絵本じゃないだろうな?
A:そんなんじゃありませんよ。
思わず笑っちゃう、ゆかいな絵本です。
ああ、こういうことあるある、って。
B:めがねにパンツわすれるのが
よくあるんかい。ボケ老人か!
A:先生方、読めば、
ボケ防止にもなりますよ!
B:先生にすすめんのかい!
A:もちろん、みんなで楽しめますよ。
1年生からボケ老人まで。
B:ボケ老人はよけいだ!
A・B:ぜひ読んでみてください。
どうもありがとうございました。


いかがでしたでしょうか?
ネタ作りは、むずかしいけれど、
おもしろいですね。

ネタの出来はともかく、
絵本は文句なしにおもしろいですよ!
ぜひ読んでみてください。


校内ビブリオ漫才で、
子どもたちがどんなネタを披露するのか、
今から楽しみです♪



(絵本の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

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さくらがつなぐ出会い

春は、出会いの季節ですね。
満開のさくらの下で、
あたらしい世界に
ドキドキしている
新1年生も多いことでしょう。

わたしも、図書館司書として、
4月からあたらしい学校にうつりました。
子どもたちに楽しい本を
たくさんとどけたいと思います。


今回紹介する本に出てくる女の子にも、
そんなあたらしい出会いがおとずれます。

"Hemlig"(「ひみつ」
ローセ・ラーゲルクランツ 作・
トルド・ニイグレーン 絵
Opal社)


Hemlig 表紙

表紙にえがかれているのは、
赤いさくらんぼのなっている
さくらの木と、
主人公の女の子。
(男の子じゃないですよ!)


ある島にかくまってもらいながら、
お母さんとひっそり暮らしています。
名前も素性も、ほとんどひみつ。

じつは、女の子とお母さんは、
母国をのがれてやってきた難民でした。
でも、あたらしい国での居住許可が下りず、
もといた国に送り返されることに
なってしまったのです。

そこで、警察に見つかって
強制送還されないよう、
こうして身をかくしているのでした。

女の子の暮らす家の庭には、
大きなさくらの木があって、
女の子は、お母さんの目をぬすんで、
この木にのぼるのが楽しみでした。


スウェーデンにも
さくらはあります。

開花の時期は、
日本よりもすこしおそく、
4月のおわりから、
5月のはじめにかけて、
しろい、きれいな花がさきます。

スウェーデンの桜



さて、あるとき、女の子は、
となりの家の男の子に
姿を見られてしまいました。

二人はやがて、
だいのなかよしになります。
女の子には、
いっしょにさくらの木にのぼる、
友だちができたのです。

でも、男の子が学校に行ったり、
ほかの友だちとあそぶときは、
女の子はひとりぼっち。
ひみつにしていなくては
ならないからです。

そんな女の子にも、
やがて春がおとずれます。

もとの国でつかまっていたお父さんが、
女の子とお母さんのもとに
もどってきたのです。

女の子は、
かくまってくれている女の人の
はからいで、
学校にも通えるようになりました。

もちろん、名前も素性も
ひみつのままですが。

こうして、
新一年生になった
女の子は、
なかよしの男の子といっしょに
学校へと向かっていきます。


みんなのように、
入学式で入学するわけではないけれど、
こんなふうに学校に通いはじめる子も
いるんですね。


あまり知られていないですが、
じつは日本にも、
この女の子のような人たちが
います。

ほかの国から逃れて
日本にやってきても、
受け入れてもらえず、
つかまって、
強制送還されるのを待つしかない
人たちがいるのです。


こうした絵本が、
そのような目に見えにくい問題に
光をあてるきっかけになると
よいなと思います。



(絵本の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

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プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、小学校の司書をしながら、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介を行っている。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座元講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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