- 2019-02-16 :
- 現地レポート
発見!! マンガ×手話 夢の共演番組
最近、スウェーデンの
おもしろいテレビ番組を
見つけました。
マンガがだいすきな
スウェーデンの女の子が、
日本各地をおとずれ、
マンガ大国ニッポンを
さまざまな角度から
リポートしていく番組です。
その名も
"Mangamyter med Momo"
(「モモさんと探るマンガのなぞ」)
スウェーデンでも、
日本のマンガは
とても人気があります。
現在は
すこし下火になっていますが、
日本のマンガに影響を受けた
スウェーデン人のマンガ家さんも登場し、
活躍しています。
スウェーデンのマンガ
"Sword Princess Amaltea"
(「ソード・プリンセス アマルテア」
Natalia Batista 作 Kolik社)

女性が統治する王国の
つよくて勇敢なおひめさまが、
超草食系のかよわい王子を助けだし、
いっしょに冒険していく物語。
日本のマンガのような、
はなやかで、かわいらしい絵と、
女性の活躍がめざましい
スウェーデンならではの
ストーリーがあいまって、
おもしろいです。
さて、
そんなマンガを愛してやまない
モモさんは、
マンガの聖地ニッポンに大興奮。
マンガ喫茶をおとずれたり、
コスプレに挑戦したり、
大手出版社で、
マンガの編集作業を見学したり。
太平洋戦争をえがいたマンガを紹介し、
広島の原爆資料館をたずねて、
戦争の悲惨さや、
平和の大切さを伝えた回の放送では、
いろいろと考えさせられました。
なかでも、この番組が
とりわけユニークなのは、
モモさんが手話でリポートする点です。
じつは、モモさんは、
耳がきこえません。
そこで、手話をつかって、
現地のようすを伝えたり、
人々と会話をしたりします。
番組では、
手話の動きにあわせて
字幕と音声もついているので、
手話がわからない人でも
楽しめるようになっています。
耳の不自由な方の手助けになるよう、
手話をつけて放送している番組は
見たことがありましたが、
この番組のように、
手話そのものがメインというのは
あまり見たことがなく、
まるで、字幕や吹き替えのついた
外国の映画を見ているようで
新鮮でした。
スウェーデンには、
公用語のスウェーデン語のほかに、
少数言語が5つありますが、
今、手話を6つ目の言語にふくめようとする
動きが出てきているそうです。
手話を補助的な役割ではなく、
守り伝えるべき
ひとつの言葉ととらえることで、
障がいというものに対する考え方も
変わってくるのではないでしょうか。
番組の中で、モモさんは、
日本のろう学校もおとずれ、
生徒たちと交流したり、
耳の不自由なマンガ家の方や
剣道家の方に話をきいたりもします。
日本とスウェーデンでは、
手話もことなり、
モモさんも、はじめは
意思の疎通に苦労します。
でも、身ぶり手ぶりで
どうにか伝わったときの
うれしさは、
国も言葉も障がいもこえて、
だれにでも共通のものなんだな、
と感じました。
そして、もちろん
マンガ愛も!!
"Mangamyter med Momo"は、
以下のSVT(スウェーデンテレビ)
ホームページより、
2019年8月1日まで
視聴できます。
https://www.svtplay.se/mangamyter-med-momo
(字幕および音声はスウェーデン語のみ)
(本の表紙の写真およびSVTホームページへのリンクは、
作者およびテレビ局の許可を得て掲載しています。)
おもしろいテレビ番組を
見つけました。
マンガがだいすきな
スウェーデンの女の子が、
日本各地をおとずれ、
マンガ大国ニッポンを
さまざまな角度から
リポートしていく番組です。
その名も
"Mangamyter med Momo"
(「モモさんと探るマンガのなぞ」)
スウェーデンでも、
日本のマンガは
とても人気があります。
現在は
すこし下火になっていますが、
日本のマンガに影響を受けた
スウェーデン人のマンガ家さんも登場し、
活躍しています。
スウェーデンのマンガ
"Sword Princess Amaltea"
(「ソード・プリンセス アマルテア」
Natalia Batista 作 Kolik社)

女性が統治する王国の
つよくて勇敢なおひめさまが、
超草食系のかよわい王子を助けだし、
いっしょに冒険していく物語。
日本のマンガのような、
はなやかで、かわいらしい絵と、
女性の活躍がめざましい
スウェーデンならではの
ストーリーがあいまって、
おもしろいです。
さて、
そんなマンガを愛してやまない
モモさんは、
マンガの聖地ニッポンに大興奮。
マンガ喫茶をおとずれたり、
コスプレに挑戦したり、
大手出版社で、
マンガの編集作業を見学したり。
太平洋戦争をえがいたマンガを紹介し、
広島の原爆資料館をたずねて、
戦争の悲惨さや、
平和の大切さを伝えた回の放送では、
いろいろと考えさせられました。
なかでも、この番組が
とりわけユニークなのは、
モモさんが手話でリポートする点です。
じつは、モモさんは、
耳がきこえません。
そこで、手話をつかって、
現地のようすを伝えたり、
人々と会話をしたりします。
番組では、
手話の動きにあわせて
字幕と音声もついているので、
手話がわからない人でも
楽しめるようになっています。
耳の不自由な方の手助けになるよう、
手話をつけて放送している番組は
見たことがありましたが、
この番組のように、
手話そのものがメインというのは
あまり見たことがなく、
まるで、字幕や吹き替えのついた
外国の映画を見ているようで
新鮮でした。
スウェーデンには、
公用語のスウェーデン語のほかに、
少数言語が5つありますが、
今、手話を6つ目の言語にふくめようとする
動きが出てきているそうです。
手話を補助的な役割ではなく、
守り伝えるべき
ひとつの言葉ととらえることで、
障がいというものに対する考え方も
変わってくるのではないでしょうか。
番組の中で、モモさんは、
日本のろう学校もおとずれ、
生徒たちと交流したり、
耳の不自由なマンガ家の方や
剣道家の方に話をきいたりもします。
日本とスウェーデンでは、
手話もことなり、
モモさんも、はじめは
意思の疎通に苦労します。
でも、身ぶり手ぶりで
どうにか伝わったときの
うれしさは、
国も言葉も障がいもこえて、
だれにでも共通のものなんだな、
と感じました。
そして、もちろん
マンガ愛も!!
"Mangamyter med Momo"は、
以下のSVT(スウェーデンテレビ)
ホームページより、
2019年8月1日まで
視聴できます。
https://www.svtplay.se/mangamyter-med-momo
(字幕および音声はスウェーデン語のみ)
(本の表紙の写真およびSVTホームページへのリンクは、
作者およびテレビ局の許可を得て掲載しています。)
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- 2019-01-01 :
- 現地レポート
ゾーレ 列車で出会った女の子
あけましておめでとうございます。
すっかりご無沙汰してしまいましたが、
スウェーデンおはなし旅、
またときどき
つづっていきたいと思いますので、
今年もどうぞよろしくお願いします。
今回は、
あたらしい年のはじまりを記念して、
昨年、わたしが体験した
「あたらしい出会い」を
おはなしふうに紹介します。
去年の夏、
スウェーデンの北にある町から、
首都のストックホルムに向かう
夜行列車に乗っていたときのことでした。

とちゅうの駅で、
異国風の女の子が
ひとりで列車に乗ってきて、
わたしのとなりにすわりました。
「よかったらどうぞ」
女の子は、わたしに
バナナをさしだしました。
わたしはちょっとびっくりしましたが、
「ありがとう」といって
バナナを受け取りました。
すると、
「これもよかったら」と
女の子がまたいって、
今度は、大きなももをさしだしました。
「お父さんが、
みんなで食べなさいって、
持たせてくれたの」
女の子は、ゾーレという名前でした。
「ゾーレっていうのは、
わたしの国の言葉で、
金星っていう意味よ」
ゾーレは、自分の名前を、
自分の国の言葉で書いてくれました。
とてもふしぎな文字でした。
わたしも、わたしの名前を
わたしの国の言葉で書いてあげました。
「夜行列車に乗るのって、はじめて」
ゾーレはいいました。
ゾーレは、前に住んでいた国から
お父さんと弟といっしょに
スウェーデンにやってきたそうです。
それから、いろんな町を転々としたあと、
北にある、ちいさな町へやってきて、
ようやく、
ずっとスウェーデンにいてもいいという
許可をもらうことができました。
スウェーデンのくらしにも
少しずつ慣れてきたけれど、
今の町には学校がないので、
あたらしい国の言葉を
もっと勉強するために、
これからひとりで、
大きな町へひっこすのだそうです。
それで、夜行列車に乗っていたのでした。
「さびしくない?」ときいたら、
ゾーレは、「少しね」といって
わらいました。
そのとき、ゾーレの携帯電話がなりました。
ゾーレの顔が、ぱっと明るくなりました。
「もしもし」
ゾーレは電話に出ると、
わたしにはわからないふしぎな言葉で、
うれしそうにいつまでも話していました。
夜があけ、朝になりました。
列車は、まもなく駅につきます。
「どんな学校に通うの?」
わたしがたずねると、
ゾーレは、
「わかんない」といって、
一枚の紙をとりだしました。
紙には、学校までの地図が
書かれているだけでした。
「これがあれば、なんとかなるわ」
とうとう、駅につきました。
列車からおりるとき、ゾーレは、
「さようなら」といって、
片手をさしだしました。
わたしは、ゾーレの手をにぎりました。
ゾーレもにぎり返しました。
その手は、女の子の手とは思えないくらい、
大きくて力強いのでした。
ゾーレならきっとだいじょうぶ。
わたしは思いました。
つらいときや苦しいとき、
ゾーレのことを思い出すと、
ふしぎと力がわいてくる気がするのです。

今年が、みなさまにとって、
すてきな出会いの
たくさんある年になりますよう!
すっかりご無沙汰してしまいましたが、
スウェーデンおはなし旅、
またときどき
つづっていきたいと思いますので、
今年もどうぞよろしくお願いします。
今回は、
あたらしい年のはじまりを記念して、
昨年、わたしが体験した
「あたらしい出会い」を
おはなしふうに紹介します。
去年の夏、
スウェーデンの北にある町から、
首都のストックホルムに向かう
夜行列車に乗っていたときのことでした。

とちゅうの駅で、
異国風の女の子が
ひとりで列車に乗ってきて、
わたしのとなりにすわりました。
「よかったらどうぞ」
女の子は、わたしに
バナナをさしだしました。
わたしはちょっとびっくりしましたが、
「ありがとう」といって
バナナを受け取りました。
すると、
「これもよかったら」と
女の子がまたいって、
今度は、大きなももをさしだしました。
「お父さんが、
みんなで食べなさいって、
持たせてくれたの」
女の子は、ゾーレという名前でした。
「ゾーレっていうのは、
わたしの国の言葉で、
金星っていう意味よ」
ゾーレは、自分の名前を、
自分の国の言葉で書いてくれました。
とてもふしぎな文字でした。
わたしも、わたしの名前を
わたしの国の言葉で書いてあげました。
「夜行列車に乗るのって、はじめて」
ゾーレはいいました。
ゾーレは、前に住んでいた国から
お父さんと弟といっしょに
スウェーデンにやってきたそうです。
それから、いろんな町を転々としたあと、
北にある、ちいさな町へやってきて、
ようやく、
ずっとスウェーデンにいてもいいという
許可をもらうことができました。
スウェーデンのくらしにも
少しずつ慣れてきたけれど、
今の町には学校がないので、
あたらしい国の言葉を
もっと勉強するために、
これからひとりで、
大きな町へひっこすのだそうです。
それで、夜行列車に乗っていたのでした。
「さびしくない?」ときいたら、
ゾーレは、「少しね」といって
わらいました。
そのとき、ゾーレの携帯電話がなりました。
ゾーレの顔が、ぱっと明るくなりました。
「もしもし」
ゾーレは電話に出ると、
わたしにはわからないふしぎな言葉で、
うれしそうにいつまでも話していました。
夜があけ、朝になりました。
列車は、まもなく駅につきます。
「どんな学校に通うの?」
わたしがたずねると、
ゾーレは、
「わかんない」といって、
一枚の紙をとりだしました。
紙には、学校までの地図が
書かれているだけでした。
「これがあれば、なんとかなるわ」
とうとう、駅につきました。
列車からおりるとき、ゾーレは、
「さようなら」といって、
片手をさしだしました。
わたしは、ゾーレの手をにぎりました。
ゾーレもにぎり返しました。
その手は、女の子の手とは思えないくらい、
大きくて力強いのでした。
ゾーレならきっとだいじょうぶ。
わたしは思いました。
つらいときや苦しいとき、
ゾーレのことを思い出すと、
ふしぎと力がわいてくる気がするのです。

今年が、みなさまにとって、
すてきな出会いの
たくさんある年になりますよう!
この春、
スウェーデンの
いくつかの図書館をまわって、
子どもたちと
ワークショップを行いました。
日本の紙芝居を読んだり、
おりがみで手裏剣を折ったりして
楽しみました。

スウェーデンの子どもたちは、
日本の漢字に興味しんしん。
おすしなど日本の食べものも
大人気でした。

参加してくれた子たちの名前を
日本語で書いてあげると、
みんな、よろこんでいました。
つづいて、
『こびん』
(松田奈那子 作・風濤社)
という絵本の
読み聞かせをしました。

さまざまな人たちからの
手紙をあずかったこびんが、
海をただよい、
だれかに手紙を届けていく、
という物語です。
こびんの中からは、
手紙とともに、
たのしげな笑い声や、
おいしそうなにおいまでも
あふれ出してきます。
こびんをあけて
元気をもらった人たちが、
今度は手紙に返事を書いて、
こびんに託します。
こびんは、その手紙を
またべつのだれかへと
届けます。
とても心のあたたかくなる
すてきな絵本です。
この絵本を
子どもたちといっしょに
楽しんだ後、
スウェーデンの子たちに、
日本の子どもたちに宛てて
手紙を書いてもらいました。

その手紙を
ペットボトルにつめて……

わたしが日本に持ち帰ってきました。
スウェーデンの子どもたちに
書いてもらった手紙を、
今度は日本の子どもたちに読んでもらい、
返事を書いてもらうワークショップを、
この夏、行う予定です。
返事は、
同じくペットボトルにつめて、
スウェーデンに送ります。
手紙を通して
スウェーデンの子たちと
日本の子たちが
なかよくなってくれたら
すてきですね。
(絵本の表紙の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)
スウェーデンの
いくつかの図書館をまわって、
子どもたちと
ワークショップを行いました。
日本の紙芝居を読んだり、
おりがみで手裏剣を折ったりして
楽しみました。

スウェーデンの子どもたちは、
日本の漢字に興味しんしん。
おすしなど日本の食べものも
大人気でした。

参加してくれた子たちの名前を
日本語で書いてあげると、
みんな、よろこんでいました。
つづいて、
『こびん』
(松田奈那子 作・風濤社)
という絵本の
読み聞かせをしました。

さまざまな人たちからの
手紙をあずかったこびんが、
海をただよい、
だれかに手紙を届けていく、
という物語です。
こびんの中からは、
手紙とともに、
たのしげな笑い声や、
おいしそうなにおいまでも
あふれ出してきます。
こびんをあけて
元気をもらった人たちが、
今度は手紙に返事を書いて、
こびんに託します。
こびんは、その手紙を
またべつのだれかへと
届けます。
とても心のあたたかくなる
すてきな絵本です。
この絵本を
子どもたちといっしょに
楽しんだ後、
スウェーデンの子たちに、
日本の子どもたちに宛てて
手紙を書いてもらいました。

その手紙を
ペットボトルにつめて……

わたしが日本に持ち帰ってきました。
スウェーデンの子どもたちに
書いてもらった手紙を、
今度は日本の子どもたちに読んでもらい、
返事を書いてもらうワークショップを、
この夏、行う予定です。
返事は、
同じくペットボトルにつめて、
スウェーデンに送ります。
手紙を通して
スウェーデンの子たちと
日本の子たちが
なかよくなってくれたら
すてきですね。
(絵本の表紙の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)
- 2016-12-31 :
- 現地レポート
「難民の子どもたちに平安を!」
スウェーデン政府は10月、
アフガニスタン政府と
難民についてのある協定を結びました。
協定によると、
アフガニスタンから
スウェーデンに逃れてきた難民たちのうち、
難民申請を却下された人々に
強制送還が適用されるようになるそうです。
スウェーデンでは、
これまでアフガニスタン側が
受け入れを拒んできたため、
アフガニスタン人に対する
強制送還は
ほとんど行われていませんでした。
しかし、まもなく
何千人という人々が
アフガニスタンへと
送り返されることになります。
アフガニスタンの子どもたちの
置かれている状況は
ひじょうに深刻で、
10人のうち9人は、
暴力にさらされているといいます。
また、強制送還されたとしても、
家族や親せきが
アフガニスタンに残っているとはかぎらず、
一人孤立してしまう危険もあります。
スウェーデンに逃れてきた人々のうち、
アフガニスタンからの難民は、
シリアに次いで多く、
昨年スウェーデンに難民申請した
アフガニスタン人は、
4万2千人以上だそうです。
彼らの申請結果が
今ようやく、
徐々に出はじめており、
多くの人々が
不安にさいなまれています。
こうした事態に抗議するデモが、
スウェーデン各地で
あいついで起こっています。
抗議の動きは、
児童文学作家たちの間にも
広がっています。
「強制送還をやめさせて、
難民の子どもたちに平安を!」
これは、以前月の記事で紹介した、
「走れ、アミーナ!」の作者
Annelie Drewsenさんが発表した、
スウェーデン政府に対する
抗議の記事の見出しです。
Annelieさんは、
強制送還を認める協定に抗議するため、
スウェーデンの児童文学作家らに呼びかけて
署名を集めました。
この記事の最後には、
集まった署名がずらりと並んでいます。
Annelieさんは、
いろいろな学校を訪問して、
ワークショップなども開いており、
難民の生徒たちと接する機会も
多くあります。
そんな彼女が出会ったうちの
二人の子どもたちの例が、
記事では取り上げられています。
Annelieさんの了解を得て、ここに
記事を紹介させていただきます。
「アミールは、父と兄を殺され、
母とは生き別れになり、
たった一人逃れてきた少年です。
国境を越える際に撃たれましたが
なんとか生きのび、
地中海を転覆寸前のボートでわたって、
スウェーデンにやってきました。
スウェーデンで、
はじめて自由というものを知ったアミールは、
現在はスウェーデンの高校に通っています。
いつかアフガニスタンにもどって、
学校をつくりたいという夢もできました。
ところが、
一週間前に、移民省から
強制送還を告げる手紙が届き、
アミールの夢は、
打ち砕かれてしまいました。
いつ、警察がやってきて、
アフガニスタンに送り返されてしまうか、
おびえる日々を送っています。
アミールは自殺をはかりましたが、
またしても生きのびました。
しかし、自分の将来に絶望し、
行き場を失ってしまっています。
もう一人の少女ゾーラも、
アフガニスタンから
母や兄弟たちとやってきました。
今は中学校でがんばって勉強していますが、
スウェーデン語を習得するのに
苦労しています。
ゾーラは、スウェーデンに
とどまれるのかという不安に
いつもさいなまれ、
殺された父親のことや、
義父となったおじのことを
よく考えています。
義父はゾーラに暴力をふるい、
学校にも行かせないようにしていました。
学校は爆撃され、
特に女子校では、タリバンによって
飲み水に毒を流されることもありました。
スウェーデンにきた今でも、
ゾーラは毎日、
水を飲むのをこわがっています。
アフガニスタンにもどされるくらいなら、
自殺した方がましだ、
とゾーラは話しています。
アミールとゾーラは、
戦争や紛争、拷問などから逃れて
スウェーデンにやってきた、
同じような境遇を持つ、
何千という子どもたちのうちの
二人です。
スウェーデンはこれまで、
こうした子どもたちに、
眠る場所や食べ物、
教育の場などを提供して、
人権を持つとはどういうことなのかを
示してきました。
その結果、彼らも、
同い年のほかの子たちと同じように
暮らせるようになりました。
ヘッドフォンで音楽をきいたり、
スマートフォンでyoutubeを見たり、
サッカーをしたりできるようになったのです。
でも、夜になると、
彼らの多くは
これからどうなるのかという不安や、
国に残っている母親を
恋しく思う気持ちにさいなまれています。
多くの子どもたちが泣いたり、
自傷行為に走ったり、
自殺しようとする
子どもたちさえいるのです。
この子たちがスウェーデンにとどまって、
教育を受け、
平穏な暮らしを送ることは
できるのでしょうか?
多くの子たちにとって、答えはノーです。
彼らの多くが、難民申請を却下され、
アフガニスタンに
強制送還されてしまうでしょう。
日に日に治安の悪くなり、
テロで大勢が犠牲になる国に
送り返されてしまうのです。
このことに、
スウェーデン政府は目をつむり、
つい先日、
難民申請を却下された人たちを
送り返すという協定を、
アフガニスタン政府と結びました。
『スウェーデンにとって大きな一歩だ』と、
移民統合大臣は述べていますが、
同時に外務省では、
アフガニスタンへの旅行者や滞在者に対し、
「アフガニスタン全域において
テロの危険性がある」と
注意を呼びかけているのです。
このような相反する倫理観が
あっていいはずはありません。
何千という子どもや若者が
ここスウェーデンで手に入れた
自由で平穏な暮らしを、
政府がこわしてはなりません。
この地に根をおろし、
将来への希望を取りもどしはじめた
子どもや若者たちを
強制送還させることは、
人道から外れる行為です。
スウェーデンは、
この国にやってきた人たちを
受け入れるだけの余裕はあると、
わたしたちは確信しています。
どうか、これらの子どもたちに平安を―」
難民を積極的に受け入れてきた結果、
おしよせる難民たちのための
住居の確保が追いつかず、
経済的負担が増し、
やむをえず
難民を制限するしかないという
苦しい状況を考えると、
政府の決定を
一概に批判もできないように思います。
しかし一方、
生死をかけてようやく手に入れた
平穏な暮らしを、
彼らからふたたび奪ってしまって
いいはずはありません。
どうすべきなのか、
また、第三国にいる
わたしたちにできることは何か、
考えていく必要があるように思います。
記事の原文は、
こちらから読めます。
http://www.svt.se/opinion/article10805765.svt
次回は、ふたたび「しあわせ」を
テーマにお届けします。
次回の更新は、1月末の予定です。
アフガニスタン政府と
難民についてのある協定を結びました。
協定によると、
アフガニスタンから
スウェーデンに逃れてきた難民たちのうち、
難民申請を却下された人々に
強制送還が適用されるようになるそうです。
スウェーデンでは、
これまでアフガニスタン側が
受け入れを拒んできたため、
アフガニスタン人に対する
強制送還は
ほとんど行われていませんでした。
しかし、まもなく
何千人という人々が
アフガニスタンへと
送り返されることになります。
アフガニスタンの子どもたちの
置かれている状況は
ひじょうに深刻で、
10人のうち9人は、
暴力にさらされているといいます。
また、強制送還されたとしても、
家族や親せきが
アフガニスタンに残っているとはかぎらず、
一人孤立してしまう危険もあります。
スウェーデンに逃れてきた人々のうち、
アフガニスタンからの難民は、
シリアに次いで多く、
昨年スウェーデンに難民申請した
アフガニスタン人は、
4万2千人以上だそうです。
彼らの申請結果が
今ようやく、
徐々に出はじめており、
多くの人々が
不安にさいなまれています。
こうした事態に抗議するデモが、
スウェーデン各地で
あいついで起こっています。
抗議の動きは、
児童文学作家たちの間にも
広がっています。
「強制送還をやめさせて、
難民の子どもたちに平安を!」
これは、以前月の記事で紹介した、
「走れ、アミーナ!」の作者
Annelie Drewsenさんが発表した、
スウェーデン政府に対する
抗議の記事の見出しです。
Annelieさんは、
強制送還を認める協定に抗議するため、
スウェーデンの児童文学作家らに呼びかけて
署名を集めました。
この記事の最後には、
集まった署名がずらりと並んでいます。
Annelieさんは、
いろいろな学校を訪問して、
ワークショップなども開いており、
難民の生徒たちと接する機会も
多くあります。
そんな彼女が出会ったうちの
二人の子どもたちの例が、
記事では取り上げられています。
Annelieさんの了解を得て、ここに
記事を紹介させていただきます。
「アミールは、父と兄を殺され、
母とは生き別れになり、
たった一人逃れてきた少年です。
国境を越える際に撃たれましたが
なんとか生きのび、
地中海を転覆寸前のボートでわたって、
スウェーデンにやってきました。
スウェーデンで、
はじめて自由というものを知ったアミールは、
現在はスウェーデンの高校に通っています。
いつかアフガニスタンにもどって、
学校をつくりたいという夢もできました。
ところが、
一週間前に、移民省から
強制送還を告げる手紙が届き、
アミールの夢は、
打ち砕かれてしまいました。
いつ、警察がやってきて、
アフガニスタンに送り返されてしまうか、
おびえる日々を送っています。
アミールは自殺をはかりましたが、
またしても生きのびました。
しかし、自分の将来に絶望し、
行き場を失ってしまっています。
もう一人の少女ゾーラも、
アフガニスタンから
母や兄弟たちとやってきました。
今は中学校でがんばって勉強していますが、
スウェーデン語を習得するのに
苦労しています。
ゾーラは、スウェーデンに
とどまれるのかという不安に
いつもさいなまれ、
殺された父親のことや、
義父となったおじのことを
よく考えています。
義父はゾーラに暴力をふるい、
学校にも行かせないようにしていました。
学校は爆撃され、
特に女子校では、タリバンによって
飲み水に毒を流されることもありました。
スウェーデンにきた今でも、
ゾーラは毎日、
水を飲むのをこわがっています。
アフガニスタンにもどされるくらいなら、
自殺した方がましだ、
とゾーラは話しています。
アミールとゾーラは、
戦争や紛争、拷問などから逃れて
スウェーデンにやってきた、
同じような境遇を持つ、
何千という子どもたちのうちの
二人です。
スウェーデンはこれまで、
こうした子どもたちに、
眠る場所や食べ物、
教育の場などを提供して、
人権を持つとはどういうことなのかを
示してきました。
その結果、彼らも、
同い年のほかの子たちと同じように
暮らせるようになりました。
ヘッドフォンで音楽をきいたり、
スマートフォンでyoutubeを見たり、
サッカーをしたりできるようになったのです。
でも、夜になると、
彼らの多くは
これからどうなるのかという不安や、
国に残っている母親を
恋しく思う気持ちにさいなまれています。
多くの子どもたちが泣いたり、
自傷行為に走ったり、
自殺しようとする
子どもたちさえいるのです。
この子たちがスウェーデンにとどまって、
教育を受け、
平穏な暮らしを送ることは
できるのでしょうか?
多くの子たちにとって、答えはノーです。
彼らの多くが、難民申請を却下され、
アフガニスタンに
強制送還されてしまうでしょう。
日に日に治安の悪くなり、
テロで大勢が犠牲になる国に
送り返されてしまうのです。
このことに、
スウェーデン政府は目をつむり、
つい先日、
難民申請を却下された人たちを
送り返すという協定を、
アフガニスタン政府と結びました。
『スウェーデンにとって大きな一歩だ』と、
移民統合大臣は述べていますが、
同時に外務省では、
アフガニスタンへの旅行者や滞在者に対し、
「アフガニスタン全域において
テロの危険性がある」と
注意を呼びかけているのです。
このような相反する倫理観が
あっていいはずはありません。
何千という子どもや若者が
ここスウェーデンで手に入れた
自由で平穏な暮らしを、
政府がこわしてはなりません。
この地に根をおろし、
将来への希望を取りもどしはじめた
子どもや若者たちを
強制送還させることは、
人道から外れる行為です。
スウェーデンは、
この国にやってきた人たちを
受け入れるだけの余裕はあると、
わたしたちは確信しています。
どうか、これらの子どもたちに平安を―」
難民を積極的に受け入れてきた結果、
おしよせる難民たちのための
住居の確保が追いつかず、
経済的負担が増し、
やむをえず
難民を制限するしかないという
苦しい状況を考えると、
政府の決定を
一概に批判もできないように思います。
しかし一方、
生死をかけてようやく手に入れた
平穏な暮らしを、
彼らからふたたび奪ってしまって
いいはずはありません。
どうすべきなのか、
また、第三国にいる
わたしたちにできることは何か、
考えていく必要があるように思います。
記事の原文は、
こちらから読めます。
http://www.svt.se/opinion/article10805765.svt
次回は、ふたたび「しあわせ」を
テーマにお届けします。
次回の更新は、1月末の予定です。
前回は"Lättläst"(やさしく読める本)
についてご紹介しました。
読み書きが困難な人たちも、
そうでない人たちも、
だれでも楽しめるLättlästの本は、
スウェーデンでは、とても普及しており、
図書館にも、多くの種類が置かれています。

読み書きが困難な人たちの中には、
障害を持つ人だけでなく、
母国語の異なる移民の人も含まれます。
そこで今回は、
「移民・難民」をテーマに
数回にわたって
レポートしていきたいと思います。
スウェーデンは、
全人口約960万人のうち、
他国のバックグラウンドを持つ人たちが
15パーセント以上を占める、
積極的な移民受け入れ国家です。
この比率を日本にあてはめてみると、
日本の総人口1億2千万人のうち、
実に1800万人が、
移民ということになります。
スウェーデンが
いかに移民を受け入れているか、
分かるかと思います。

通りを歩いていると、
すれ違う人はみんな移民、
聞こえてくるのは、スウェーデン語ではなく、
アラビア語や異国の言葉ばかり、という町も。
スウェーデンには、
移民や難民の人たちのための
スウェーデン語習得のコース
(Svenska för invandrare:
移民のためのスウェーデン語コース。
略してSFIと呼ばれます。)
があり、無料で通うことができます。
著者は、先日スウェーデンを訪れ、
母校のSFIクラスを取材してきました。
この日の授業に参加したのは、
12人。
アフガニスタンやトルコ出身の人、
そして、半数以上の7人が
シリア出身でした。
スウェーデンは、2013年から
シリア難民をすべて受け入れる方針を
打ち出しているため、
シリアからの難民が急増しています。
学校の近くの小さな町で、
家族と再会できるのを待っているお父さん。
つい先日、
家族と再会でき、
スウェーデンで
新しい暮らしを始めた人。
弟と二人で逃れてきて、
今は、エンジニアになるため、
大学進学をめざして、
スウェーデン語を学んでいる青年。
一家で会社を経営していたのに、
戦争で亡命を余儀なくされ、
スウェーデンに逃れてきた人。
いろんな人がいました。
つらい経験をしてきただろうけれど、
皆、明るく冗談を言い合っているのが
とても印象的でした。

学校の教室。
この日の授業では、
著者が日本について紹介し、
みんなで折り紙をおりました。
生徒たちは、研修に行ったり、
居住許可の申請や審査を受けるため、
移民局に行ったりと
それぞれ忙しく、
全員がそろうことは
なかなかないそうです。
移民や難民の人たちが
増えているのを受け、
絵本やおはなしの中でも、
そうした人たちが
取り上げられるようになってきました。
次回は、
そんな彼らが、
文化の違いにとまどいながらも、
スウェーデンで居場所を見出そうとする
おはなしをご紹介したいと思います。
次回の更新は、9月下旬の予定です。
についてご紹介しました。
読み書きが困難な人たちも、
そうでない人たちも、
だれでも楽しめるLättlästの本は、
スウェーデンでは、とても普及しており、
図書館にも、多くの種類が置かれています。

読み書きが困難な人たちの中には、
障害を持つ人だけでなく、
母国語の異なる移民の人も含まれます。
そこで今回は、
「移民・難民」をテーマに
数回にわたって
レポートしていきたいと思います。
スウェーデンは、
全人口約960万人のうち、
他国のバックグラウンドを持つ人たちが
15パーセント以上を占める、
積極的な移民受け入れ国家です。
この比率を日本にあてはめてみると、
日本の総人口1億2千万人のうち、
実に1800万人が、
移民ということになります。
スウェーデンが
いかに移民を受け入れているか、
分かるかと思います。

通りを歩いていると、
すれ違う人はみんな移民、
聞こえてくるのは、スウェーデン語ではなく、
アラビア語や異国の言葉ばかり、という町も。
スウェーデンには、
移民や難民の人たちのための
スウェーデン語習得のコース
(Svenska för invandrare:
移民のためのスウェーデン語コース。
略してSFIと呼ばれます。)
があり、無料で通うことができます。
著者は、先日スウェーデンを訪れ、
母校のSFIクラスを取材してきました。
この日の授業に参加したのは、
12人。
アフガニスタンやトルコ出身の人、
そして、半数以上の7人が
シリア出身でした。
スウェーデンは、2013年から
シリア難民をすべて受け入れる方針を
打ち出しているため、
シリアからの難民が急増しています。
学校の近くの小さな町で、
家族と再会できるのを待っているお父さん。
つい先日、
家族と再会でき、
スウェーデンで
新しい暮らしを始めた人。
弟と二人で逃れてきて、
今は、エンジニアになるため、
大学進学をめざして、
スウェーデン語を学んでいる青年。
一家で会社を経営していたのに、
戦争で亡命を余儀なくされ、
スウェーデンに逃れてきた人。
いろんな人がいました。
つらい経験をしてきただろうけれど、
皆、明るく冗談を言い合っているのが
とても印象的でした。

学校の教室。
この日の授業では、
著者が日本について紹介し、
みんなで折り紙をおりました。
生徒たちは、研修に行ったり、
居住許可の申請や審査を受けるため、
移民局に行ったりと
それぞれ忙しく、
全員がそろうことは
なかなかないそうです。
移民や難民の人たちが
増えているのを受け、
絵本やおはなしの中でも、
そうした人たちが
取り上げられるようになってきました。
次回は、
そんな彼らが、
文化の違いにとまどいながらも、
スウェーデンで居場所を見出そうとする
おはなしをご紹介したいと思います。
次回の更新は、9月下旬の予定です。