- 2015-10-27 :
- 読み物(小学校中学年)
移民の姿を伝える(2)
前回ご紹介した
『水着』のおはなしは、
作者の娘さんの同級生が
モデルになっているそうです。
娘さんはスウェーデン人ですが、
クラスには移民の生徒がひじょうに多く、
文化の違いに直面することも
しばしばだそうです。
『水着』のおはなしでは、
慣習の違いから、
学校の水泳の授業に参加できない
女の子たちのために、
女の子だけの特別な水泳教室が
開かれていました。
こうした特別な水泳教室は、
スウェーデンでは
よく行われています。
作者のオーサさんは、
いろいろな学校をおとずれて
講演をする機会があると、
子どもたちにこんなことを
問いかけるそうです。
「もし、あなたたちが先生で、
文化の違いから
水泳の授業を受けられない
生徒がいたらどうする?」
「その子が泳げるようになるためには、
どうしたらいいと思う?」
移民の問題は、
スウェーデンの子どもたちにとっても
実に身近で、
考えていかなければならない
重要な問題なのです。
さて、今日は
そんな移民の問題に
直面することになった
スウェーデンの女の子のおはなしを
ご紹介します。
"En plats är tom"
(「からっぽの席」
Annika Thor 作・Emma Virke 絵
Sveriges Radio 制作)
この作品は、
子ども向けのラジオドラマとして
2014年にスウェーデンで
放送されたものです。

ある日、
スウェーデン人の少女リーブのクラスに
一人の少女が転校してきました。
名前は、アイシャ。
村のはずれの難民宿舎に
お母さんと弟たちと
一緒に住んでいました。
難民宿舎というのは、
さまざまな国や地域から
逃れてきた人たちが、
スウェーデンにとどまれるかどうか、
移民局からの決定を待っている間、
一時的に暮らしている宿舎です。
アイシャ一家も、
ここで暮らしながら
スウェーデンでの居住許可が下りるのを
待っていました。
学校で、
アイシャはリーブのとなりの席になり、
やがて二人は親友になります。
ある冬の日。
リーブとアイシャは、
アイシャの弟が
いじめられているのを目撃します。
いじめっ子たちは、
アイシャの弟に
「国へ帰れ」といったり、
「おまえの黒い顔をきれいにしてやる」
といいながら、
雪をおしつけたりしていました。

怒ったアイシャが
いじめっ子たちに雪玉を投げつけた
ちょうどそのとき、
運悪く、先生に見つかってしまいます。
先生は、理由も聞かずに
アイシャをしかり、
「スウェーデンにとどまりたいなら、
この国でのきまりに合わせるように」
というのでした。
その後、アイシャ一家は、
スウェーデンでの居住許可が下りず、
国に送り返されることになってしまいました。
いじめっ子たちに雪玉を投げつけたせいだ、
と自分を責めるアイシャ。
そんなことはない、
とリーブとお母さんはなぐさめます。

アイシャ一家が警察に連れられて
空港へと向かっていくのを、
リーブはやるせない気持ちで
見送るのでした。
この物語はフィクションですが、
これまで一緒に遊んでいた友だちが
ある日突然、強制送還されて、
いなくなってしまうということは、
実際、ひんぱんに起こっています。
私がスウェーデンで通っていた学校でも、
イラクから来ていた女の子が
強制送還されることになり、
抗議の署名を集めたことがありました。
やっとのことで戦火を逃れてきても、
送り返されてしまえば、
難民たちは再び、
命の危険にさらされることになります。
しかし、難民の受け入れと
その後、彼らが国にとどまれるかどうかは、
また別問題というのが
現状なのです。
次回は、
難民たち自身が
自らの体験を語った物語を
ご紹介します。
次回の更新は、
11月下旬の予定です。
(物語中のさし絵は、Sveriges Radioホームページより
転載したものです。ラジオ局およびイラストレーターの許可を得て掲載しています。)
『水着』のおはなしは、
作者の娘さんの同級生が
モデルになっているそうです。
娘さんはスウェーデン人ですが、
クラスには移民の生徒がひじょうに多く、
文化の違いに直面することも
しばしばだそうです。
『水着』のおはなしでは、
慣習の違いから、
学校の水泳の授業に参加できない
女の子たちのために、
女の子だけの特別な水泳教室が
開かれていました。
こうした特別な水泳教室は、
スウェーデンでは
よく行われています。
作者のオーサさんは、
いろいろな学校をおとずれて
講演をする機会があると、
子どもたちにこんなことを
問いかけるそうです。
「もし、あなたたちが先生で、
文化の違いから
水泳の授業を受けられない
生徒がいたらどうする?」
「その子が泳げるようになるためには、
どうしたらいいと思う?」
移民の問題は、
スウェーデンの子どもたちにとっても
実に身近で、
考えていかなければならない
重要な問題なのです。
さて、今日は
そんな移民の問題に
直面することになった
スウェーデンの女の子のおはなしを
ご紹介します。
"En plats är tom"
(「からっぽの席」
Annika Thor 作・Emma Virke 絵
Sveriges Radio 制作)
この作品は、
子ども向けのラジオドラマとして
2014年にスウェーデンで
放送されたものです。

ある日、
スウェーデン人の少女リーブのクラスに
一人の少女が転校してきました。
名前は、アイシャ。
村のはずれの難民宿舎に
お母さんと弟たちと
一緒に住んでいました。
難民宿舎というのは、
さまざまな国や地域から
逃れてきた人たちが、
スウェーデンにとどまれるかどうか、
移民局からの決定を待っている間、
一時的に暮らしている宿舎です。
アイシャ一家も、
ここで暮らしながら
スウェーデンでの居住許可が下りるのを
待っていました。
学校で、
アイシャはリーブのとなりの席になり、
やがて二人は親友になります。
ある冬の日。
リーブとアイシャは、
アイシャの弟が
いじめられているのを目撃します。
いじめっ子たちは、
アイシャの弟に
「国へ帰れ」といったり、
「おまえの黒い顔をきれいにしてやる」
といいながら、
雪をおしつけたりしていました。

怒ったアイシャが
いじめっ子たちに雪玉を投げつけた
ちょうどそのとき、
運悪く、先生に見つかってしまいます。
先生は、理由も聞かずに
アイシャをしかり、
「スウェーデンにとどまりたいなら、
この国でのきまりに合わせるように」
というのでした。
その後、アイシャ一家は、
スウェーデンでの居住許可が下りず、
国に送り返されることになってしまいました。
いじめっ子たちに雪玉を投げつけたせいだ、
と自分を責めるアイシャ。
そんなことはない、
とリーブとお母さんはなぐさめます。

アイシャ一家が警察に連れられて
空港へと向かっていくのを、
リーブはやるせない気持ちで
見送るのでした。
この物語はフィクションですが、
これまで一緒に遊んでいた友だちが
ある日突然、強制送還されて、
いなくなってしまうということは、
実際、ひんぱんに起こっています。
私がスウェーデンで通っていた学校でも、
イラクから来ていた女の子が
強制送還されることになり、
抗議の署名を集めたことがありました。
やっとのことで戦火を逃れてきても、
送り返されてしまえば、
難民たちは再び、
命の危険にさらされることになります。
しかし、難民の受け入れと
その後、彼らが国にとどまれるかどうかは、
また別問題というのが
現状なのです。
次回は、
難民たち自身が
自らの体験を語った物語を
ご紹介します。
次回の更新は、
11月下旬の予定です。
(物語中のさし絵は、Sveriges Radioホームページより
転載したものです。ラジオ局およびイラストレーターの許可を得て掲載しています。)
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