- 2016-03-28 :
- 読み物(小学校中学年)
増える差別の芽
第二次世界大戦時、
中立国で戦争の被害を受けなかった
スウェーデンは、
迫害された多くの人々に
支援の手をさしのべました。
戦争が終わった後も、
ドイツやフィンランドなど、
戦争で荒廃した国の子どもたちを
一時的に引き取って、
住む場所や食べ物を提供したり、
教育を受けさたりといった
活動もしていました。
昨年秋までは、
すすんで難民を受け入れ、
積極的に援助してきた
スウェーデン。
しかし、
そんなスウェーデンにも、
人種差別の芽は現れています。
今回ご紹介するおはなしは
"Min brorsa heter Noa"
(「お兄ちゃんの名前はノーア」
アンナ-クラーラ・ティードホルム 作
ヨアンナ・ヘルグレーン 絵
アルファベータ社)

人種主義に傾倒していく若者を
描いた作品です。
幼い女の子のサーガは、
お母さんと
やさしいお兄さんのノーアと
いっしょに暮らしていました。
ところが、ノーアは
しだいに部屋に閉じこもるように
なってしまいます。
「ぼくはもう
ノーアなんかじゃない」
兄は人が変わったようになり、
サーガが
黒髪で肌の茶色い友だちと遊んでいると、
「そんなやつとはつき合うな」と
言い出しました。

ナイフを隠し持ったり、
ヒトラーのポスターをはったり、
建物のかべに
ナチスのかぎ十字の落書きをしたり、
兄の行動は、
どんどんエスカレートしていきます。

とうとう、
仲間と暴動を起こした兄は、
警察に連行されてしまいました。
おはなしの中だけでなく、
実際の社会でも、
こうしたネオナチの動きは
増えてきています。
昨年10月には、
ナイフを持った男が小学校に乱入し、
先生や生徒数人が殺害される
事件が起きました。
男は失業中で、
仕事が見つからないのは
難民たちのせいだとして、
移民や難民の子どもの多く通っている
学校をおそったのだそうです。
今年に入ってからも、
難民をねらった事件は
すでにいくつも起きています。
身寄りのない難民の子どもたちの
世話をしていた女性が
おそわれるという
ひさんな事件もありました。
かつては
ナチスに迫害された人たちを受け入れ、
多くの難民たちに
救いの手をさしのべてきた
スウェーデンで、
今、その寛大な受け入れに対する反動から、
ネオナチの動きが
活発になってきているというのは、
何とも皮肉なことです。
"Min brorsa heter Noa"の
おはなしの最後では、
サーガとお母さんが、
少年院にいる兄を
たずねてやってきます。

「お兄ちゃんはノーアだよね?」
とたずねるサーガに、
「そうだよ」
と答えるノーア。
以前のやさしいお兄さんに
もどったことを予感させるような、
再生の希望を残して
おはなしは終わります。
次回の更新は、4月下旬の予定です。
(本の写真はイラストレーターの許可を得て掲載しています。)
中立国で戦争の被害を受けなかった
スウェーデンは、
迫害された多くの人々に
支援の手をさしのべました。
戦争が終わった後も、
ドイツやフィンランドなど、
戦争で荒廃した国の子どもたちを
一時的に引き取って、
住む場所や食べ物を提供したり、
教育を受けさたりといった
活動もしていました。
昨年秋までは、
すすんで難民を受け入れ、
積極的に援助してきた
スウェーデン。
しかし、
そんなスウェーデンにも、
人種差別の芽は現れています。
今回ご紹介するおはなしは
"Min brorsa heter Noa"
(「お兄ちゃんの名前はノーア」
アンナ-クラーラ・ティードホルム 作
ヨアンナ・ヘルグレーン 絵
アルファベータ社)

人種主義に傾倒していく若者を
描いた作品です。
幼い女の子のサーガは、
お母さんと
やさしいお兄さんのノーアと
いっしょに暮らしていました。
ところが、ノーアは
しだいに部屋に閉じこもるように
なってしまいます。
「ぼくはもう
ノーアなんかじゃない」
兄は人が変わったようになり、
サーガが
黒髪で肌の茶色い友だちと遊んでいると、
「そんなやつとはつき合うな」と
言い出しました。

ナイフを隠し持ったり、
ヒトラーのポスターをはったり、
建物のかべに
ナチスのかぎ十字の落書きをしたり、
兄の行動は、
どんどんエスカレートしていきます。

とうとう、
仲間と暴動を起こした兄は、
警察に連行されてしまいました。
おはなしの中だけでなく、
実際の社会でも、
こうしたネオナチの動きは
増えてきています。
昨年10月には、
ナイフを持った男が小学校に乱入し、
先生や生徒数人が殺害される
事件が起きました。
男は失業中で、
仕事が見つからないのは
難民たちのせいだとして、
移民や難民の子どもの多く通っている
学校をおそったのだそうです。
今年に入ってからも、
難民をねらった事件は
すでにいくつも起きています。
身寄りのない難民の子どもたちの
世話をしていた女性が
おそわれるという
ひさんな事件もありました。
かつては
ナチスに迫害された人たちを受け入れ、
多くの難民たちに
救いの手をさしのべてきた
スウェーデンで、
今、その寛大な受け入れに対する反動から、
ネオナチの動きが
活発になってきているというのは、
何とも皮肉なことです。
"Min brorsa heter Noa"の
おはなしの最後では、
サーガとお母さんが、
少年院にいる兄を
たずねてやってきます。

「お兄ちゃんはノーアだよね?」
とたずねるサーガに、
「そうだよ」
と答えるノーア。
以前のやさしいお兄さんに
もどったことを予感させるような、
再生の希望を残して
おはなしは終わります。
次回の更新は、4月下旬の予定です。
(本の写真はイラストレーターの許可を得て掲載しています。)
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