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お知らせ

2016年2月のお知らせにて
ご紹介しました、
『ラミッツの旅 
ロマの難民少年のものがたり』

今年の夏休みの本(緑陰図書)に
選ばれました。

全国学校図書館協議会 
第49回夏休みの本(緑陰図書)
http://www.j-sla.or.jp/recommend/natsuyasumi-49.html

ご興味のある方は、
ぜひご覧ください。



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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

がんばる力の連鎖反応

最近、こんなすてきな
ニュースを見つけました。

ストックホルム郊外の町にある
デザインセンターLivstycketでは、
移民の女性たちが
スウェーデン語を学びながら、
刺繍やテキスタイルデザインなどを
行っています。

そんな彼女たちの作ったかばんが
EU議会で採用され、
職員のかばんとして
使われることになったそうです。


Livstycketは、
移民女性たちを支援する団体として、
1992年にはじまりました。

ここで学ぶ生徒たちの中には、
他の学校でスウェーデン語の授業に
ついていけなかったり、
まわりの環境になじめなかったりして、
自信を失い、
孤独感に苦しんできた人も
多いようです。

生徒たちは、
テキスタイルを通じて、
楽しみながらスウェーデン語や
スウェーデンの文化を学ぶことで
自信を取り戻し、
社会に溶け込むための
一歩を踏み出しています。


これからご紹介する絵本
"Den andra mamman"
(「生まれ変わったお母さん」
Viveka Sjögren 作・絵
Kabusa Böcker社)
に登場するお母さんも、
スウェーデン社会に
なじめないでいます。


幼稚園の遠足で、
海に行くことになった
わたしとニーナとお母さん。

でも、集合場所のはずのバス停に、
他のみんなの姿は見えません。

スウェーデン語が
分からないお母さんは、
どうやら、集合場所を
間違えてしまったようです。

お母さんは
スウェーデン語が話せないので、
だれかに道をたずねることもできません。

「こんなお母さんなんていや。
どうして、みんなみたいに
スウェーデン語を読んだり、
話したりできないの」
と、わたしは思います。


しかたなく、
三人は歩き出しました。

ところが、
途中で大きな牛に
出くわしてしまいました。

「助けて、お母さん!」

すると、お母さんは、
かぶっていたスカーフをはずして、
牛に立ち向かいました。
闘牛士のように
ひらりと牛をかわすと……

「ほーら、ちょろいもんよ」
わたしとニーナはびっくり。


とうとう、海につきました。
三人の前には、
どこまでもつづく広い海が
広がっています。

夕方になりました。

バスはいつくるのでしょう?
時刻表を見ても、
なんて書いてあるのか、
よく分かりません。


やがて夜になりました。
お母さんは、スカーフで
浜辺にテントをはりました。

「お母さん、
何かおはなしをして」

お母さんは、
バスの時刻表を取り出すと、
「むかしむかし、あるところに……」


朝になりました。
お母さんはスカーフを広げて
凧をつくりました。

なんだか、
いつものお母さんとは、
まるで別人みたいです。

浜辺の向こうから、
犬を連れたおばさんが
歩いてくるのが見えました。

「あの人に、
バスがいつくるか聞いてみるわ。
あなたたちは、ここで待っていて」
そういうと、お母さんは
大空に凧をかかげて、
元気に走っていきました。


このお母さんのように、
何かのきっかけで
自信を取り戻すことができれば、
それが励みとなって、
次へ進もうと思えるように
なれるかもしれません。

この絵本の中のお母さんや、
Livstycketの生徒さんたちの
がんばる姿が、
彼らと同じ境遇にある移民たちや、
自信をなくしかけている、
他の多くの人たちに
勇気を与え、
自分もがんばってみようと、
一歩を踏み出す力を
与えてくれるのではないでしょうか。



次回の更新は、7月末の予定です。

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プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、小学校の司書をしながら、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介を行っている。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座元講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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