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スウェーデンのしあわせ絵本館 食の巻その3

食べられるということ自体が、
しあわせに感じられる
場合もあります。

“Hoppas”
(「希望」
Åsa Anderberg Strollo 作・
Gilla böcker (Lilla piratförlaget) 社)


Hoppas 表紙

家庭に居場所がなく、
家をとびだした少女ヨンナが、
都会で路上生活をはじめる物語。

町をさまよい、
仕事も住む場所もなく、
バスの車内やゴミすて場で
夜を明かすうち、
ヨンナは、同じように行き場を失った
少女たちと出会い、
友情を深めていきます。

大都会のはなやかさとは対照的に、
生きていくために、
万引きや売春をする少女など、
苦しい境遇の中で必死に生きる
子どもたちの姿が描き出されます。


ヨンナが仲良くなった
少女たちのうちの一人エリーナは、
ゴミのコンポストの中で暮らし、
コンビニで売れ残った
シナモンロールをひろって食べて、
命をつないでいました。

スウェーデンのおやつの定番で、
コンビニでもかならず売られている
シナモンロールですが、
つねに焼き立てを提供しているため、
冷めたら捨てられてしまうのです。

エリーナは、
そんなシナモンロールを食べ、
公園のトイレの水を飲んで
暮らしています。

エリーナとヨンナは、
ゴミのコンポストの中で、
捨てられたシナモンロールを食べながら、
お互いの境遇を語り合います。


町には、ヨンナたちのように
行き場のない子どもたちのための
サポートを行っている施設があり、
ヨンナたちは、ときどきそこへ行って、
支援員の人たちと
食事をしたり、雑談をしたりして、
つかの間、心の休息を得ます。


以前、日本のこんなドキュメンタリー番組を
見たことがあります。
行き場を失った子どもたちに
食事を提供したり、相談に乗ったりして、
彼らのよりどころとなっている
女性について紹介したものでした。

子どもたちには、安心して、
しっかりごはんを食べられる
環境が大切だ、
という女性の言葉が印象的でした。


食卓を囲んではぐくまれる、
支援員の人たちとの交流や、
同じような悩みをかかえた
仲間との友情。

この物語のタイトルのHoppasは、
「希望を持つ」という意味です。
絶望のふちにあっても、
かならず希望はある、
というメッセージが
こめられているようです。

どんなにかすかな希望でも、
光を見出したとき、
人はしあわせに感じるのでは
ないでしょうか。
そうしてつかんだしあわせは、
きっと大きな力になるように思います。


食にまつわるしあわせ、
いかがでしたでしょうか。

次回は、別の観点から
「しあわせ」を
探してみたいと思います。



(本の表紙の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)
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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介にたずさわる。
スウェーデン児童文学翻訳家。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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