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五感で味わうあたらしい世界

先日、ピアニストの
梯剛之(かけはし たけし)さんの
チャリティーコンサートに行ってきました。

梯さんは、幼いころに視力を失い、
盲目のピアニストとして
世界的に活躍しています。

これまで生の演奏を聴いたことは
あまりなかったので、
とても新鮮でした。
演奏はすばらしかったです!

トークも楽しく、
気取らないきさくな人柄に
魅了されました。


梯さんは楽譜が見えないので、
曲を何度も何度もくりかえし
聴いておぼえるのだそうです。

小児がんで片方の視力を失い、
その後、もう片方の目にも転移が見つかり、
手術をしなければならないというときに、
ショパンの曲と出会って
心を動かされ、
自分もこんなふうに弾けるようになりたい、
と思ったことが、
ピアニストをこころざすきっかけになった、
と語ってくれました。

そうした強い思いが、
人の心を打つ音色の
原動力となっているのだなあ、
と感じました。


体でリズムや息づかいを感じながら弾く、
という梯さんの演奏を聴いて、
こんな絵本を思い出しました。


"Blinda rädluvan och vargen"
(「目の見えない赤ずきんちゃんと
オオカミのおはなし」
ハン・シー 作 
リリー・シエ スウェーデン語訳
※原作は中国語ですが、
わたしは中国語が読めないので、
スウェーデン語訳で読みました。)

だれもがよく知っている
グリム童話の「赤すきん」のおはなしを
もとにしていますが、
この絵本の赤ずきんちゃんは、
目が見えません。

そのかわり、
音やにおいや手触りで、
あたらしい発見をします。

あたらしいことに気づくたび、
赤ずきんちゃんのまわりの世界が
しだいにはなやかになっていきます。


梯さんのコンサートを聴いていたとき、
目を開けて聴くのと
目を閉じて聴くのとでは、
聞こえ方がちがうことに気がつきました。

わたしの座っていた席は
後ろの方だったので、
目を開けて聴いていると、
音も遠くからきこえてくるような
感じでしたが、
目を閉じて聴くと、
音が立体になって立ちのぼってくるようで、
まるで、すぐそばで
ひびいているように
感じられました。


それぞれの感覚を研ぎすまして
世界を味わうというのは
こういうことなのかな、と
赤ずきんちゃんの思いが
少しだけわかったような気がします。


赤ずきんちゃんは
オリジナルのおはなしと同じく、
やっぱりオオカミに出会います。

オオカミは、
赤ずきんちゃんの目が
見えないのをいいことに、
「自分はかわいいイヌだよ」とウソをつき、
赤ずきんちゃんを食べる機会を
ねらっているのですが・・・

オオカミのまぬけさに
思わずクスリとさせられ、
赤ずきんちゃんのやさしさに
ほっこり心があたたまる絵本です。



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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、小学校の司書をしながら、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介を行っている。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座元講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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