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発見!! マンガ×手話 夢の共演番組

最近、スウェーデンの
おもしろいテレビ番組を
見つけました。

マンガがだいすきな
スウェーデンの女の子が、
日本各地をおとずれ、
マンガ大国ニッポンを
さまざまな角度から
リポートしていく番組です。

その名も
"Mangamyter med Momo"
(「モモさんと探るマンガのなぞ」)


スウェーデンでも、
日本のマンガは
とても人気があります。

現在は
すこし下火になっていますが、
日本のマンガに影響を受けた
スウェーデン人のマンガ家さんも登場し、
活躍しています。

スウェーデンのマンガ
"Sword Princess Amaltea"
(「ソード・プリンセス アマルテア」
Natalia Batista 作 Kolik社)

Sword Princess Amaltea 表紙

女性が統治する王国の
つよくて勇敢なおひめさまが、
超草食系のかよわい王子を助けだし、
いっしょに冒険していく物語。

日本のマンガのような、
はなやかで、かわいらしい絵と、
女性の活躍がめざましい
スウェーデンならではの
ストーリーがあいまって、
おもしろいです。


さて、
そんなマンガを愛してやまない
モモさんは、
マンガの聖地ニッポンに大興奮。

マンガ喫茶をおとずれたり、
コスプレに挑戦したり、
大手出版社で、
マンガの編集作業を見学したり。

太平洋戦争をえがいたマンガを紹介し、
広島の原爆資料館をたずねて、
戦争の悲惨さや、
平和の大切さを伝えた回の放送では、
いろいろと考えさせられました。


なかでも、この番組が
とりわけユニークなのは、
モモさんが手話でリポートする点です。

じつは、モモさんは、
耳がきこえません。

そこで、手話をつかって、
現地のようすを伝えたり、
人々と会話をしたりします。

番組では、
手話の動きにあわせて
字幕と音声もついているので、
手話がわからない人でも
楽しめるようになっています。

耳の不自由な方の手助けになるよう、
手話をつけて放送している番組は
見たことがありましたが、
この番組のように、
手話そのものがメインというのは
あまり見たことがなく、
まるで、字幕や吹き替えのついた
外国の映画を見ているようで
新鮮でした。

スウェーデンには、
公用語のスウェーデン語のほかに、
少数言語が5つありますが、
今、手話を6つ目の言語にふくめようとする
動きが出てきているそうです。

手話を補助的な役割ではなく、
守り伝えるべき
ひとつの言葉ととらえることで、
障がいというものに対する考え方も
変わってくるのではないでしょうか。


番組の中で、モモさんは、
日本のろう学校もおとずれ、
生徒たちと交流したり、
耳の不自由なマンガ家の方や
剣道家の方に話をきいたりもします。

日本とスウェーデンでは、
手話もことなり、
モモさんも、はじめは
意思の疎通に苦労します。
でも、身ぶり手ぶりで
どうにか伝わったときの
うれしさは、
国も言葉も障がいもこえて、
だれにでも共通のものなんだな、
と感じました。

そして、もちろん
マンガ愛も!!


"Mangamyter med Momo"は、
以下のSVT(スウェーデンテレビ)
ホームページより、
2019年8月1日まで
視聴できます。

https://www.svtplay.se/mangamyter-med-momo
(字幕および音声はスウェーデン語のみ)


(本の表紙の写真およびSVTホームページへのリンクは、
作者およびテレビ局の許可を得て掲載しています。)

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

ゾーレ 列車で出会った女の子

あけましておめでとうございます。

すっかりご無沙汰してしまいましたが、
スウェーデンおはなし旅、
またときどき
つづっていきたいと思いますので、
今年もどうぞよろしくお願いします。

今回は、
あたらしい年のはじまりを記念して、
昨年、わたしが体験した
「あたらしい出会い」を
おはなしふうに紹介します。


去年の夏、
スウェーデンの北にある町から、
首都のストックホルムに向かう
夜行列車に乗っていたときのことでした。

夜行列車

とちゅうの駅で、
異国風の女の子が
ひとりで列車に乗ってきて、
わたしのとなりにすわりました。

「よかったらどうぞ」
女の子は、わたしに
バナナをさしだしました。

わたしはちょっとびっくりしましたが、
「ありがとう」といって
バナナを受け取りました。

すると、
「これもよかったら」と
女の子がまたいって、
今度は、大きなももをさしだしました。
「お父さんが、
みんなで食べなさいって、
持たせてくれたの」

女の子は、ゾーレという名前でした。
「ゾーレっていうのは、
わたしの国の言葉で、
金星っていう意味よ」

ゾーレは、自分の名前を、
自分の国の言葉で書いてくれました。
とてもふしぎな文字でした。
わたしも、わたしの名前を
わたしの国の言葉で書いてあげました。

「夜行列車に乗るのって、はじめて」
ゾーレはいいました。

ゾーレは、前に住んでいた国から
お父さんと弟といっしょに
スウェーデンにやってきたそうです。
それから、いろんな町を転々としたあと、
北にある、ちいさな町へやってきて、
ようやく、
ずっとスウェーデンにいてもいいという
許可をもらうことができました。

スウェーデンのくらしにも
少しずつ慣れてきたけれど、
今の町には学校がないので、
あたらしい国の言葉を
もっと勉強するために、
これからひとりで、
大きな町へひっこすのだそうです。

それで、夜行列車に乗っていたのでした。

「さびしくない?」ときいたら、
ゾーレは、「少しね」といって
わらいました。

そのとき、ゾーレの携帯電話がなりました。
ゾーレの顔が、ぱっと明るくなりました。
「もしもし」
ゾーレは電話に出ると、
わたしにはわからないふしぎな言葉で、
うれしそうにいつまでも話していました。

夜があけ、朝になりました。
列車は、まもなく駅につきます。

「どんな学校に通うの?」
わたしがたずねると、
ゾーレは、
「わかんない」といって、
一枚の紙をとりだしました。
紙には、学校までの地図が
書かれているだけでした。

「これがあれば、なんとかなるわ」

とうとう、駅につきました。
列車からおりるとき、ゾーレは、
「さようなら」といって、
片手をさしだしました。
わたしは、ゾーレの手をにぎりました。
ゾーレもにぎり返しました。
その手は、女の子の手とは思えないくらい、
大きくて力強いのでした。

ゾーレならきっとだいじょうぶ。
わたしは思いました。

つらいときや苦しいとき、
ゾーレのことを思い出すと、
ふしぎと力がわいてくる気がするのです。


ストックホルム到着



今年が、みなさまにとって、
すてきな出会いの
たくさんある年になりますよう!


テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

とっておきの節約術、おしえます!

今年ものこりわずかとなりました。
なにかと出費の多い
年の瀬の時期、
おさいふがピンチという方は、
こんな方法で
楽しく乗り切ってみては
いかがでしょう?


"Veckan före barnbidraget"
(「子ども手当の前の一週間」)
Elin Johansson 作
Ellen Ekman 絵
rabén & sjögren 社)

表紙

スウェーデンには、
barnbidrag(子ども手当)という
制度があり、
16歳以下の子どものいる家庭に
毎月1050クローナ(約1万5千円)が
支給されます。

この絵本に登場する
「わたし」のお母さんは、
barnbidragが支給される前の一週間、
家計が苦しい中でも、
ユーモアあふれるアイディアで
乗り切ります。

たとえば……

気分は宇宙飛行士?

やぶれた長ぐつにも
銀色のテープをはってなおせば、
宇宙飛行士がはくブーツみたいに早変わり。
これで、しばらくはもちそうです。

でも、やっぱり
わたしはあたらしいのがほしいかな……。


映画館に行くかわりに
図書館へ行けば、
映画を一本見るよりも
たくさん本を借りられてお得。
しかもタダ!

でもやっぱり
わたしは映画に行きたいかな……。


ソーセージはおるすばん

今日の夕ごはんは、
ソーセージとマカロニのはずですが……
ソーセージが見当たりません。
「ソーセージは、お店でおるすばんなのよ」
と、お母さん。


よく日は、おうちで宝さがし。
家にあるお金をかきあつめて、
お菓子を買いに行きました。
おつりを、お店の前で
物乞いをしていた女の人にあげたら、
とてもよろこんでくれました。

小さなしあわせ おすそわけ


barnbidragの日まで、
あと一日。
けれど、お母さんは、
とうとうつかれてしまいました。

ソファに横になって、
「あれが食べたい。これをしたい。
どこかに行きたーい!」

そこで、わたしは、
「じゃあ、とっておきの
遊園地に行こう!」
と、お母さんを連れ出して……

ふたりだけの遊園地

やってきたのは
小さな公園。
お母さんとわたし、
ふたりだけの遊園地です。

明日は、
待ちに待ったbarnbidragの日。


つらいことや苦しいことに
ぶつかっても、
ちょっと見方を変えてみることで、
ふと心が軽くなったり、
前向きになれるのかもしれないと
教えてくれる絵本です。



(絵本の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

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ジャンル : 学問・文化・芸術

お知らせ

2015年9月の記事にて紹介しました
"Baddräkten"(「水着」)
の翻訳が刊行されました。

『わたしも水着をきてみたい』表紙

『わたしも水着をきてみたい』
オーサ・ストルク 作
ヒッテ・スペー 絵
きただい えりこ 訳
さ・え・ら書房

ソマリアからスウェーデンに
引っ越してきた女の子が、
文化や考え方のちがいに
とまどいながらも、
あたらしい暮らしに
なじんでいこうとする物語です。

ご興味のある方は、
ぜひ読んでみてください。



(本の表紙の写真は、出版社の許可を得て掲載しています。)

手紙で国際交流!

この春、
スウェーデンの
いくつかの図書館をまわって、
子どもたちと
ワークショップを行いました。

日本の紙芝居を読んだり、
おりがみで手裏剣を折ったりして
楽しみました。

紙芝居の読み聞かせ

スウェーデンの子どもたちは、
日本の漢字に興味しんしん。

おすしなど日本の食べものも
大人気でした。

名前を日本語で書くと……

参加してくれた子たちの名前を
日本語で書いてあげると、
みんな、よろこんでいました。


つづいて、
『こびん』
(松田奈那子 作・風濤社)
という絵本の
読み聞かせをしました。

『こびん』表紙

さまざまな人たちからの
手紙をあずかったこびんが、
海をただよい、
だれかに手紙を届けていく、
という物語です。

こびんの中からは、
手紙とともに、
たのしげな笑い声や、
おいしそうなにおいまでも
あふれ出してきます。

こびんをあけて
元気をもらった人たちが、
今度は手紙に返事を書いて、
こびんに託します。

こびんは、その手紙を
またべつのだれかへと
届けます。

とても心のあたたかくなる
すてきな絵本です。


この絵本を
子どもたちといっしょに
楽しんだ後、
スウェーデンの子たちに、
日本の子どもたちに宛てて
手紙を書いてもらいました。

日本のお友だちへ!

その手紙を
ペットボトルにつめて……

お手紙をつめました。

わたしが日本に持ち帰ってきました。


スウェーデンの子どもたちに
書いてもらった手紙を、
今度は日本の子どもたちに読んでもらい、
返事を書いてもらうワークショップを、
この夏、行う予定です。

返事は、
同じくペットボトルにつめて、
スウェーデンに送ります。


手紙を通して
スウェーデンの子たちと
日本の子たちが
なかよくなってくれたら
すてきですね。




(絵本の表紙の写真は、作者の許可を得て掲載しています。)

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ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

きただい えりこ

Author:きただい えりこ
スウェーデンに留学し、児童文学と文芸創作を学ぶ。
現在は、小学校の司書をしながら、スウェーデンの絵本・児童書の翻訳と紹介を行っている。
よみうりカルチャー荻窪教室「絵本で学ぶスウェーデン語」講座元講師。
日本の絵本・児童書をスウェーデン語に翻訳し、スウェーデンで紹介もしている。

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